内部統制報告書-開示すべき重要な不備の事例(2012年12月)

Henley-on-Thames 166: Weak Bridge

2012年12月に公表された内部統制の開示すべき重要な不備です。3月決算会社の訂正で3社(うち2社は同一グループ)、6月・9月・10月決算会社の訂正(うち9月決算会社は当期における開示も)で3社の計6社ありました。

会社名 取引所 決算期 開示すべき重要な不備の内容 事業年度末日までに是正できなかった理由 開示すべき重要な不備の是正方針 連結財務諸表等に与える影響 財務諸表の監査報告における監査意見 付記事項/特記事項
株式会社オリバー 名証2部 H21.10
H22.10
H23.10
当社医療福祉営業部において、過年度から当社元従業員(元執行役員)が、特定の取引先との取引に際して商品の納入・販売の実態がないにも関わらず仕入・売上計上を行う架空・循環取引を継続的に行っていた。これらの事実は、コンプライアンス意識の不徹底、直送取引に係る販売及び購買プロセスに関する規程類の不備、医療福祉営業部の承認手続きに不備があり、職務分離や相互牽制が十分に機能していなかったこと及びモニタリングが不十分であったことによる。以上のことから、当社の全社的な内部統制及び業務プロセスに関する内部統制に重要な欠陥があったため、当該架空・循環取引の発見に遅れを生じさせたものと認識した。 元従業員(執行役員)の不正行為が判明したことによるH21.10~H23.10期の内部統制報告書の訂正である(是正中)。 ①コンプライアンスの徹底とコンプライアンス・マニュアルの改正
②各種規程集の改定及び実務との整合性の確認
③成果主義及び昇進・昇給制度の改革
④取締役会及び監査役の更なる活性化
⑤管理・コンプライアンス部門の充実化

なし(訂正による過年度業績への影響は処理済み) (訂正後の連結財務諸表について)無限定適正意見 なし
株式会社テー・オー・ダブリュー 東証1部 H21.6
H22.6
H23.6
H24.6
当社の管理本部における滞留売掛金調査の過程で、回収できない売掛金が存在することが判明し、調査を進めたところ、売上高の過大計上及び売上原価の過少計上といった不適切な会計処理が行われていたことが判明した。当該不適切な会計処理が実行され発見が遅れた原因は、新規の特殊業務に対し、リスク識別及びそのリスクに対応した管理体制を構築する全社的内部統制及び当該業務に対する販売管理プロセス及び仕入管理プロセスに開示すべき重要な不備があったことによる。 過年度において不適切な会計処理があった事実が判明したことによるH21.6~H24.6期の内部統制報告書の訂正である(是正中)。 (全社的な内部統制に対する是正措置)
①新規事業に対する内部統制の構築
②プロジェクト別の原価管理の細分化
(プロセスレベル統制に対する是正措置)
①売上計上の統制手続の強化
②仕入計上の統制手続の強化
(内部統制のさらなる強化)
①管理監督者の新規業務に対する知識・経験の向上
②コンプライアンス教育の充実
③内部通報制度の周知徹底
④内部監査室の機能強化
なし(訂正による過年度業績への影響は処理済み) (訂正後の連結財務諸表について)無限定適正意見 なし
扶桑電通株式会社 東証2部 H21.9
H22.9
H23.9
H24.9
当社地方支店において、監査法人から長期売掛金残高が増加している特定取引先の仕掛在庫確認の際に差異指摘を受け、当該取引先に対する契約案件の調査を行った結果、当該支店において平成22年3月売上分より一部実態のない架空取引及び平成19年2月売上分よりマンション設備機器販売に関するスルー取引を確認した。また、類似取引の有無について調査した結果、平成21年2月売上分より一部営業所におけるネットワーク情報機器販売取引案件についてもスルー取引と判定した。架空取引については、特定得意先と仕入先が関係した商流であり、当社担当者の関与はなかったものと判断しているが、直送による物品販売を装った取引を検出できなかったこと、さらに、企業規模にそぐわない売掛金残高が増大していたことから、受注時の商流確認と与信管理、取引の異常性に対するモニタリング体制及び仕掛品に対する実在性の検証に係る内部統制の不備と判断した。また、スルー取引については、商流把握が不十分であったことから、受注時の商流確認及び取引のモニタリング体制に係る内部統制の不備と判断した。 受注時の不適切な取引に対する発見コントロール、与信管理及び取引の異常性に対するモニタリングが有効に整備されておらず、是正措置を講ずることができなかったため。 ①業務プロセスに係る内部統制の追加整備
・受注時の商流確認と与信管理体制の強化
・取引の異常性に対する分析及び調査体制の整備
・棚卸資産に対する実在性の検証体制の整備
②内部統制の運用の徹底
③モニタリング機能の強化
④コンプライアンス意識の醸成・徹底
なし(開示すべき重要な不備に起因する財務報告上の影響額は、決算過程で適正に修正済み) (訂正後の過年度連結財務諸表を含め)無限定適正意見 なし
メッセージ JASDAQ H24.3 当社の連結子会社である株式会社ジャパンケアサービスグループにおいて、賃貸不動産の減損処理及び事業譲受に関するのれんの減損処理について不適切な会計処理が行われていたことが明らかになった。これらの事実は、当社において、関係会社に対しての管理体制が不十分だったこと、関係会社における会計処理方針あるいはガイドラインの整備が不十分だったこと、関係会社の会計データを含む経営管理指標のモニタリング体制が不十分だったことなどの不備があり、内部統制が機能しなかったことによる。以上のことから当社の全社的な内部統制、決算・財務報告プロセスに関する内部統制に開示すべき重要な不備あったため、不適切な会計処理が行われ、かつその発見に遅れを生じさせたものと認識している。 過年度において不適切な会計処理があった事実が判明したことによるH24.3期の内部統制報告書の訂正である(是正中)。※なお、ジャパンケアサービスグループは、公開買付によりH24.3期の連結会計年度より連結の範囲に含めている ①組織体制および関係会社管理体制の見直し
②関係会社における会計処理方針、経理関係の規程・マニュアル等の確立
③事業およびリスク特性に適合した内部統制体制の再構築
④関係会社に対する監査およびモニタリング体制の強化
⑤予算編成および予算統制プロセスの再構築
なし(訂正による過年度業績への影響は処理済み) 監査報告書の添付なし なし
ジャパンケアサービス JASDAQ H24.3
H23.3
H22.3
H21.3
当社が過年度に提出した有価証券報告書等において、賃貸不動産の減損処理および事業譲受に関するのれんの減損処理について、不適切な部分があり、減損損失の計上漏れあるいは計上不足があるとの指摘を受けた。これらの要因は、会計に関する専門的な知識が不足していたこと、適正な会計処理を行うための経理マニュアル等に不備があったこと、担当者のスキル等に依存した体制であったこと、会計処理の前提となる事実関係の把握および必要な情報の収集が不充分であったこと、将来計画の見通しや各事業所の損益予測が甘かったことにある。よって、当社の全社的な内部統制の一部および決算・財務報告プロセスに係る内部統制の一部に重要な不備があったと認識した。 過年度において不適切な会計処理があった事実が判明したことによるH21.3~H24.3期の内部統制報告書の訂正である(是正中)。 以下を実行していくとともに、親会社である株式会社メッセージと同一の基準で内部統制を機能することができる体制の構築する
①会計処理全般に関する経営陣の意識改革
②決算・財務報告プロセスの整備と運用の徹底
③会計処理全般に関する社員教育の徹底
④外部専門家の積極的な活用
⑤予算の精度強化
⑥モニタリング体制の強化
なし(訂正による過年度業績への影響は処理済み) (訂正後の過年度連結財務諸表を含め)無限定適正意見 なし
コマニー株式会社 名証2部 H24.3
H23.3
H22.3
H21.3
当社は、海外における事業及びそれに関わる取引に関して、不適切な処理が行われたとの疑義が生じ、その調査結果を受けて、連結範囲の変更の要否、関連当事者との取引に係る記載の訂正の要否等を検討した。また、これを契機に、中国の連結子会社の売上高計上等の会計処理及び当社の過去の決算における繰延税金資産の回収可能性等の会計処理についても再度、検討をした。連結範囲の変更の要否の検討の結果、当社が平成23年8月31日付にて買収いたしました南京捷林格建材有限公司が、買収以前の設立当初(設立日:平成19年4月5日)から当社の子会社と判定すべきと認識し、第48期(自 平成19年4月1日 至 平成20年3月31日)に遡って同社を連結子会社にすることとした。また、中国子会社の売上原価の計上時期及び当社の繰延税金資産の計上額についてもあわせて訂正を行った。当該事実の発覚が遅れたのは、当社の連結決算プロセスに関する統制と子会社に対するモニタリング統制に不備があったことによる。具体的には、連結決算プロセスについては、連結子会社の範囲の決定と親会社、子会社の財務諸表の分析手続、モニタリング統制については、内部統制評価の対象としていない子会社の内部統制の構築・運用状況の具体的な把握及び役職員の職務執行が法令・定款に適合していることに対する監視体制に不備があった。加えて、取締役会による積極的な情報共有と監視、中国事業推進部門に対する管理部門による牽制も十分に機能しなかった。以上のことから上記に関連する当社の全社的な内部統制及び全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに関する内部統制の整備・運用に開示すべき重要な不備があったと認識している。 過年度において不適切な会計処理があった事実が判明したことによるH21.3~H24.3期の内部統制報告書の訂正である(是正中)。 <コマニー本体における内部統制強化と経営及び組織の見直し>
①社外取締役の採用
②中国事業推進部門に対する経営管理機能の強化
③コマニーグループの内部統制の見直し推進部署の新設と、子会社を含めた決算プロセスへの監視及び内部監査の強化等
<取締役のコンプライアンス意識の徹底と取締役会規定の改訂>
①取締役会規定を改訂、子会社報告事項の範囲等の明確化等
なし(訂正による過年度業績への影響は処理済み) (訂正後の過年度連結財務諸表を含め)限定付適正意見 なし

Source:開示情報「訂正内部統制報告書」などをもとに筆者にて要約

注:情報の検索範囲の網羅性については確保されていません。あらかじめご了承ください。

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Akiyoshi KANEKO

業務プロセスを可視化(モデル化)し、その可視化されたドキュメントを中心においてプロジェクトを推進するアプローチを提唱している。経理・財務分野を主な専門領域として、業務プロセスの改善やシステム構築、組織体制の整備に関するコンサルティングに従事。プロジェクト現場では、「お互いの仕事を理解する」「現状の課題を共有する」「考えていることを相手に伝える」「新しいしくみを共有し実行まで落とし込む」よう関係者間の橋渡し役として活動する。著書『内部統制評価にみる「重要な欠陥」の判断実務』『阻害要因探しから始める決算早期化のテクニック』
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