企業が決算早期化に取り組む要因(会計制度の改革と市場からの要請)その2

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仰星監査法人が3月に主催する「決算早期化」のセミナーで講師をする関係で、仰星ニュースレター(無料購読のメールマガジン)に決算早期化のコラムを連載しています。今回のエントリーもそこに寄稿した「(第2回)プロジェクト目標を設定する」の内容をもとにしています。

前回、決算早期化プロジェクトの背景や目標・スコープの移り変わりをみてみました。会計制度改革や市場からの要請で、全体として決算発表が早期化される傾向がありましたが、今回はまず最近の状況を確認したいと思います。

今回はまずこれまで決算早期化のプロジェクト活動がその時代の背景に合わせてどのように目標やスコープが変遷してきたかをみてみたいと思います。

最近の決算発表状況

2006年の決算発表の開示時期を45日以内が適当で30日以内がより望ましいとする決算短信の総合的な見直し案(東証)や2008年の四半期報告書の法定提出期限を45日とした改正(金商法)が、早期開示の後押しをしてきました。下表は東証3月決算会社の平均所要日数の推移です。

決算期 所要日数 備考
2003年3月期 46.5日 連結決算発表
46.2日 個別決算発表
2006年3月期 42.5日 全体平均 連結作成会社のすべてが連単同時発表
2008年3月期 40.2日
2010年3月期 39.4日
2012年3月期 38.4日 過去最短

前回参照した2002年3月期が48.3日(連結決算発表)ですので、この10年でさらに10日ほど短縮されたことになります。

企業と投資家とのコミュニケーションを考えた場合、決算情報が投資判断上、最も重要な会社情報の一つであることから、市場からの早期開示の要請は今後も続くものと思われます。

また、早期発表会社(決算日から決算発表までの所要日数が30日以内の会社)の数は、ここ数年全体の約20%前後の会社数で推移しています。下表は東証3月決算会社の早期発表会社数の推移です。

決算期 早期発表会社数 全体に占める割合
2010年3月期 368社 21.1%
2011年3月期 336社 19.5%
2012年3月期 333社 19.4%

3月決算会社の場合はゴールデンウィークを挟みますので、決算発表が早い会社とそうでない会社のグループができて(開示時期の差が目立ち)ます。

最近の決算早期化プロジェクト

話を早期化プロジェクトの傾向に戻しましょう。ここ数年決算早期化に取り組む企業の特徴に国際財務報告基準(IFRS)の決算日統一要請への対応があります。現在の開示スケジュールを決算日統一後も維持するためには、決算日変更が必要なグループ会社は連結パッケージを現在よりも早期に提出しなければならないことが多いからです。

全体としての所要日数の短縮率や早期発表会社の割合は落ち着いていますが、決算日統一や開示ボリュームの増大といったIFRS導入時の影響を見越して、従来の経理業務をより迅速かつ効率的に実施する取り組みは引き続き活発なようです。

前回質問の答えと目標設定の大切さ

さて、前回の終わりに会計制度の改革や市場からの要請以外で、企業が決算早期化に取り組む一番のきっかけは何でしょうか?という問いかけをしました。その答えは「同業他社が自社よりも早期に決算を発表した(している)」です。この点は今も昔も変わりがありません。事実を知った(または意識した)経営者が「うちもあそこと同じ日に決算発表できるようにする」と発言したら・・早急にプロジェクトチームが発足されると思います。

決算早期化のプロジェクトは、まず決算発表日などの目標となる指標を決め、それをプロジェクト目標として企業(グループ)内関係者と共有することから始まります。したがって経営者自身が早期開示の意識と目標設定をすることはプロジェクトの推進に大きな力を与えます。

目標を明確にすることで、早期化プロジェクトの成功を測る基準になるだけでなく、早期化上の課題解決の優先順位付けやプロジェクトスコープを決定する基準にもなります。良い悪いは別として、早期化プロジェクトをしていると、早期化とは直接関係のない課題も見えてきてしまいます。ともすると何がプロジェクトの目標だったのかわからない議論に陥るかもしれません。そのような時、当初の目標に立ち返ることで、プロジェクトが軌道修正のきっかけを得ることもあります。

次回は決算早期化作業の課題設定の中で最も重要な「クリティカル・パスの特定」についてお伝えしたいと思います。

※文中の統計データは東証公表資料をもとに作成しています。

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Akiyoshi KANEKO

業務プロセスを可視化(モデル化)し、その可視化されたドキュメントを中心においてプロジェクトを推進するアプローチを提唱している。経理・財務分野を主な専門領域として、業務プロセスの改善やシステム構築、組織体制の整備に関するコンサルティングに従事。プロジェクト現場では、「お互いの仕事を理解する」「現状の課題を共有する」「考えていることを相手に伝える」「新しいしくみを共有し実行まで落とし込む」よう関係者間の橋渡し役として活動する。著書『内部統制評価にみる「重要な欠陥」の判断実務』『阻害要因探しから始める決算早期化のテクニック』
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