中小企業金融円滑化法終了後に求められる経理財務管理の姿勢とその学び方

中小企業の経営者の方は、どちらかと言えば「営業」に強い、または「技術」に強い一方で、「経理財務管理」は苦手という傾向があるのではないでしょうか(是非を問うのではありません)。今日は中小企業にとって、業績の早期把握と評価、計画立案・実行といういわゆるPDCAサイクルを円滑にまわすことの必要性とその学び方について説明します。

中小企業金融円滑化法の終了

リーマンショック後の景気後退と金融混乱への金融対策施策として、2009年12月に始った中小企業金融円滑化法が、これまで2度の延長を経て、この3月末日でついに期限切れとなります。

この法令は、企業側には業種転換や新商品開発など経営改善計画を求める一方、金融機関に対しては融資条件の緩和などを促しました。その結果、借入金融機関への申込みに対する実行率は90%超と高く、リーマンショック後の不況下でも倒産件数は減少するという現象(これも政策効果)が出ていました。

安部政権下の政策

この期限切れを迎えるにあたって、14日首相官邸のホームページでは「中小企業金融円滑化法の期限到来に備えて」と中小企業の経営支援のための政策パッケージを公表しています。

  1. 中小企業金融円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針(金融庁)
  2. 相談窓口の開設(金融庁)
  3. 経営改善・資金繰り支援(中小企業庁)

上記①の中では金融検査・監督の対応について以下のように述べられています。

  • 金融検査・監督の目線やスタンスは、円滑化法の期限到来後も、これまでと何ら変わりません。⇒ 検査・監督を通じて金融機関に対し、関係金融機関と十分連携を図りながら、貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるよう促します。
  • 円滑化法の期限到来後も不良債権の定義は変わりません。(貸付条件の変更等を行っても不良債権とならないための要件は恒久措置です)
  • 個々の借り手の経営改善にどのように取り組んでいるのか、検査・監督において、従来以上に光を当てます。

(中小企業金融円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針より引用)

金融機関の見方と企業がとるべき対応

企業が事業遂行にリスクを負うのと同じように、金融機関も企業に資金を融資するのはリスクを背負います。企業に融資をしたが返済は大丈夫か?事業の成長性は?返済財源は生み出せるのか?など金融機関もリスクがどの程度あるか必死に評価をしています。

このから借り手としての企業は、金融機関へ安心感を抱かせる行動をとることが肝要とわかります。

それがどのような企業かと言えば、

一つは「自社の現状を正確に迅速に把握している」ということです。

「月次決算を翌月15日には把握している」などが具体的な例です。年次決算でも、納税のためだけを考えた確定決算は決算日後2ヶ月という期日がありますが、年次決算の数字が2ヶ月を待たないと確定しないというは、経営管理におけるサイクルとして遅すぎます。

もう一つは「短期、中期の事業の先行きを見通せている」ということです。

決算実績の見込が作成できる、中期計画の数字を企業環境や製品戦略から説明できる、借入金によって対象としている設備投資の目的や効果を説明できる、などが具体的な例です。

「答え」ではなく、「手法」を学ぶ

金融円滑化法が終了する今、中小企業に求められるのはこのような「経理財務管理の姿勢」ではないでしょうか。前者の「自社の現状を正確に迅速に把握している」というのは、一般的に『決算早期化』として知られている手法が有効です。中小企業にとって『決算早期化』をすることは、業績を早期に把握・評価し、次の計画立案に活かす(PDCAサイクルを円滑にする)ための手法となります。こうすれば決算が早期化されるという「答え」はありません。また、経理財務担当者の人員不足、スキル不足に依存する部分はすぐに解決できない問題です。しかし、決算早期化の「手法」を使って、月次決算の手続を改善することで迅速な経営情報の入手ができる部分もあります。

また、後者の「短期、中期の事業の先行きを見通せている」に関連して、政府は、独力では経営改善計画の策定が困難な小さな中小企業・小規模事業者に対して、全国の認定支援機関(税理士、弁護士、地銀・信金・信組等)が計画策定を支援するとしています。認定支援機関は企業の実情を見て、必要に応じて色々と手を動かして計画も策定してくれるかもしれません。しかし、これら認定支援機関から得るべきことも、「答え」としての計画ではなく、計画作成などの「手法」です。あくまでも計画作成など必要なことをレクチャしてもらうにとどめ、支援後は自力で作成できるようにしたいものです。

決算早期化や計画作成は本来自社の内部管理ニーズを満たすための作業です。しかし同時に、決算実績(見込み)の財務諸表や今後の財政収支見込みを金融機関に持参して理解と支援を要請することもできます。これら数字の背景となっている製品力、技術力、市場動向、販売チャネルなどの特長をアピールすることで、説得感も出て、安心してもらえる可能性も高くなります。

お知らせ

上記決算早期化の「手法」をお伝えするセミナーを22日に開催します。決算早期化をするための改善機会の抽出に『PERT図』の考え方を適用した手法をご紹介します。

決算早期化-プロジェクト成功のためのキーポイント(3月22日(金)仰星監査法人グループセミナー)