業務改善(問題解決型)を目的とした業務プロセスの可視化は機能表現を用いる

業務機能は、インプットを価値あるものに変換してアウトプットするしくみを言います。業務プロセスは、この業務機能がつながったものです。業務プロセスの改善作業に取り組む場合、業務プロセスをフローチャートのような技法を使って、業務機能が繋がっている様子を見える化し、問題認識・原因分析・課題設定をします。

ところで、業務改善(問題解決型)に取り組むために向いているフローチャートの書き方には一つのコツがあります。

業務プロセスの可視化は「○○を○○する」という業務の具体的な内容がわかるように表現する

そのコツというのは、フローチャート内において業務機能の内容を、「○○を○○する」という形式で記述する(機能表現を用いる)ことです。

通常、業務機能の連鎖を表現するために、フローチャートでは図形と矢線を用いて、それを繋いで表現していきます。フローチャートを描くことによって、作業手順と情報・物、金の流れを目に見える形で確認することができます。

その業務機能の図形内に記述する文章表現として単に「○○処理」「○○管理」といった曖昧な表現ではなく、また「○○表」「○○データ」といった帳票・データ名だけの記述とはせずに、「○○を○○する」という業務の具体的な内容がわかるように表現するのです。

抽象度が高い(曖昧)、帳票・データ名だけを矢線で繋いだフローチャートは論点を共有できない

なぜ、機能表現が優れているかを知るために、最初に、抽象度が高い(曖昧)、帳票名だけを矢線で繋いだフローチャートの例を見てみます。下図は、受注プロセスのフローチャートで「注文書」とか「受注処理」とだけ描かれた2つの楕円が、矢線で繋がれています。

例1

この場合、注文書というドキュメントが存在すること、受注に関する処理機能が存在することはわかりますが、業務の繋がり(ここでは商流、情流)はよく見えません。読み手が業務機能の内容や矢線の意味を推測する必要があります。

対象となる業務に精通している人であれば、ある程度自分で補って読むことができるかもしれませんが、プロジェクト参加メンバー全員が精通しているとは限りません。実際には質疑応答を通じて理解を深めていきますが、現状を理解することに必要以上の時間を使ってしまうことに加えて、各々が理解した内容が一致するとは限りません。

つまり、抽象度が高い(曖昧)、帳票名だけを矢線で繋いだフローチャートでは論点を共有できないのです。

機能表現によって、業務改善(問題解決型)の視点を持ちやすくなる

一般的に業務改善(問題解決型)のプロジェクトでは、業務のムリ・ムダ・ムラといった問題を洗い出します。何が問題なのか、その原因は、と分析するにあたって論点を共有しながら進める必要があります。

そして、作業の手順・情報・物・金の流れを意識して、インプット-プロセス-アウトプットという形で業務機能と矢線を繋ぎ、業務機能の内容を「○○を○○する」という『機能表現』で表わすことによって、次のような問題発見の視点を持ちやすくなります。

問題発見の視点

  • 必要な情報が適時に入手できているか
  • 二重作業はないか
  • 同じ情報をバラバラに持っていないか
  • 情報間に不整合はないか
  • 一人の担当者に業務が集中していないか
  • 特定の時期に業務が集中していないか
  • 担当者のスキルは充分か

業務改善(問題解決型)のためには、業務プロセスの可視化は機能表現にすべき

ということで、次に業務機能を「○○を○○する」という機能表現で記載したフローチャートを見てみます。

下図はさきほどと同じ業務を「得意先から注文書を受けとる」「注文書の内容を受注システムに登録する」という機能表現を使ってフローチャートを作成しています。

例2

2つのフローチャートを比較して、違いを感じることができますでしょうか。

一つは業務内容が理解しやすいと思います。具体的には、最初の抽象度が高い(曖昧)、帳票・データ名だけを矢線で繋いだフローチャートと比較をすると、読み手にストレスを与えない、理解違いを防止できるというメリットを感じると思います。

さらにそれに加えて、機能表現を使ったフローチャートでは、「何が問題か」ということを考えるために、例えば次のような具体的な問いかけがしやすいのです。

  • 「得意先からの注文書はいつ何で(手段)受け取りますか」
  • 「注文内容を確認したあと何をしますか」
  • 「受注システムへの登録は受領した注文書以外に何か必要な情報はありますか」
  • 「受注システムに登録した受注情報は何かリストに出力しますか」

このような問いかけをする中で、問題を発見することができるかもしれません。例えば、受注登録にあたっては商品の在庫数と入荷予定を確認して、納期を割り出す作業を人が実施していてそれが煩雑であるなどです。

2つのフローチャートの違いはあまり意識されない(重要視されない)点かもしれませんが、業務機能を「インプットを価値あるものに変換してアウトプットするしくみ」ととらえる=業務プロセスの可視化は機能表現を用いるというのは、個人的には業務プロセスを現状分析する立場の人にとっては重要な要素技術だと思っています。