内部統制報告書-開示すべき重要な不備の事例(2013年5月)

2013年5月に内部統制報告書において、開示すべき重要な不備などを公表した企業です。

開示すべき重要な不備などの概要

椿本興業株式会社

過年度から特定の取引先との取引に際して、商品の納入・販売の実体が無いにも関わらず仕入・売上計上を行う不正取引を継続的に行っていた、という従業員による不正に関連した不備です。

株式会社マツヤ

仕入割戻等の架空計上や私財入金による未収入金の回収、たな卸資産の過大計上など不適切な会計処理に関連した不備です。

株式会社守谷商会

工事案件に係る工事未払金の未計上と工事原価の付替など不適切な会計処理に関連した不備です。

日本コンベヤ株式会社

取引の一部に実在性の無い取引が含まれていることが判明したという不適切な処理に関連した不備です。上記椿本興業から椿本興業で発覚した不正行為が疑われる取引の一部に、日本コンベヤとの取引が含まれているとの連絡を受けて調査を実施したそうです。

日本風力開発株式会社

4月19日に平成21年3月期の内部統制の訂正報告書を提出したことは、このシリーズのエントリーですでにご紹介していますが、5月15日には平成22年3月期から平成24年3月期までの3期分の内部統制の訂正報告書を提出しています。

同社の内部統制報告書における経営者の評価結果は、平成24年3月期は「有効」、平成22年3月期と平成23年3月期は「開示すべき重要な不備があり、内部統制は有効でない」としていますが、それらのいずれの報告書にも次の記載事項が追記されています。

なお、当社は、平成25年4月19日付で第10期(自平成20年4月1日 至平成21年3月31日)有価証券報告書の訂正報告書を提出したことに伴い、当事業年度にかかる有価証券報告書についても訂正報告書を提出しておりますが、当該決算訂正は、関東財務局長により発出された訂正命令に従って有価証券報告書の訂正を行ったものであり、当初の財務報告に係る内部統制の有効性の評価結果には、影響しないものであります。

(内部統制の訂正報告書より引用)

開示すべき重要な不備の一覧

会社名
決算期
開示すべき重要な不備などの内容
事業年度末日までに是正できなかった理由
開示すべき重要な不備の是正方針
連結財務諸表等に与える潜在的な影響
付記事項/特記事項
椿本興業株式会社
H21.3,H22.3,H23.3,H24.3
当社中日本営業本部において、当社従業員が不正取引を行っていたことが平成25年3月に判明し、その実態及び損失額を調査するために同年3月18日に社内調査委員会(委員長:代表取締役社長 椿本哲也)を設置するとともに、社内調査に対する公正中立な検証や、第三者による独自調査を行うために、弁護士、公認会計士等で構成される第三者委員会を同年3月25日に設置し調査を実施いたしました。
同調査により、同営業本部において、過年度から当社従業員が、特定の取引先との取引に際して商品の納入・販売の実体が無いにも関わらず仕入・売上計上を行う不正取引を継続的に行っていたことが明らかになりました。
これに伴い当社は、当該不正取引による過年度決算への影響額を調査し、過年度の決算を訂正するとともに、平成20年3月期から平成25年3月期第3四半期までの有価証券報告書、半期報告書及び四半期報告書について訂正報告書を提出いたしました。
これらの事実は、役職員のコンプライアンス意識が希薄であったこと、職務分離や相互牽制が十分に機能していなかったこと及びモニタリングが不十分であったこと、並びに仕掛品在庫の棚卸管理が不十分であったことによるものです。
以上のことから、当社の全社的な内部統制及びたな卸資産に係る業務プロセスに関する内部統制に開示すべき重要な不備(重要な欠陥)があったため、当該不正取引が防止されず、かつ発見に遅れを生じさせたものと認識しています。
上記事実は当事業年度末日後に発覚したため、当該不備を当事業年度末日までに是正することができませんでした。
(1)コンプライアンス意識の徹底とコンプライアンス規定の新設
(2)内部通報制度の改善
(3)定期的人事異動の実施
(4)営業部門より発注業務の分離と営業事務の見直し
(5)各種内部規定の見直しと実務運用の徹底
(6) 内部監査体制の充実
(7) 取締役会及び監査役の更なる活性化
株式会社マツヤ
H25.2
当社において、不適切な会計処理が行われていた可能性があることが判明したため、平成24年12月28日に調査委員会を設置し、過去の会計処理の内容及びその根拠となる取引の状況等につき、徹底した調査を進めてまいりました。
調査委員会による調査の結果、平成23年2月期以降、仕入割戻等の架空計上及び不正ではないものの架空計上以外の原因による利益の過大計上並びにこれらに関する利益の過少計上があることと、取締役の一部が私財を当社に入金し未収入金が回収されたものとする処理を行ったことが明らかになりました。また、たな卸資産につき、不正ではないものの当社が過大計上として修正する点の妥当性についても調査報告書に言及されております。なお調査委員会の調査報告書については、平成25年2月8日付リリース(「調査委員会の調査報告及び当社の対応について」)にて公表されております。
本件については、全社的な内部統制の重要な一部として経営者の業務執行を監督すべき取締役会の機能不全があり統制環境に不備があること、また仕入割戻に係る業務プロセスにおける統制手続に不備があること、併せて、全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスでは、たな卸資産の評価に係る決算業務において充分な検討がなされなかったこと、及び企業風土やコンプライアンス意識における問題点がありました。以上のような財務報告に係わる内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当すると判断しました。本件発覚以降、当事業年度末日までに十分な整備・評価期間を確保できず、その運用の有効性を確認することができませんでした。したがって、当事業年度末日時点における当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断いたしました。
本件に対する当社の対応として、不適切な会計処理が確認された過年度に遡り、平成23年2月期以降の決算を修正し、平成23年2月期及び平成24年2月期の有価証券報告書の訂正報告書、平成23年2月期第1四半期から平成25年2月期第2四半期までの四半期報告書の訂正報告書を提出いたしました。
本件発覚以降、当事業年度末日までに十分な整備・評価期間を確保できず、その運用の有効性を確認することができませんでした。
〈是正措置項目〉
1.仕入割戻等の計上及び入金に関する業務フローの改善
2.たな卸資産の評価を含む決算管理機能及び決算業務能力の改善
3.組織改編
4.リスクの確認および業務分掌規程を含む社内規程の見直し
5.コンプライアンス意識の徹底及び企業風土の改善
6・役員・従業員研修
7.内部監査の拡充・充実
8.内部通報制度の信頼回復・活性化
株式会社守谷商会
H24.3
当社は平成24年3月期の工事原価の処理に関し、名古屋支店において一部不適切な会計処理が行われていた可能性があることが判明したため、平成25年3月28日に法務、会計の専門家を交えた内部調査委員会を設置し、不適切な会計処理の内容等につき徹底した調査を行ってまいりました。同委員会による調査の結果、平成24年3月期決算において名古屋支店の「介護老人保健施設シンセーロ会所新築工事」に係る工事未払金が総額で9,622万円(消費税等を除く)未計上になるとともに、同支店の他の工事の工事原価として付け替えが行われ、翌期の平成24年9月から同25年2月にかけて支払われていた事実が明らかになりました。
本件に対する当社の対応として平成24年3月期以降の決算を訂正し、平成24年3月期の有価証券報告書及び平成25年3月期の第1、第2、第3四半期報告書の訂正報告書を提出いたしました。
本件については、取締役以下の役職員のコンプライアンスを踏まえた業務処理に対する自覚が不十分であったことに加え、全社的な内部統制の重要な一部として取締役の業務執行を相互監視、監督すべき取締役会の機能が不十分で統制環境に不備があったこと、工事原価の計上業務プロセスにおいて担当部署と管理・経理部門の相互牽制、モニタリング等が不十分であったこと等の統制手続の不備に起因するものと認識しております。以上のような財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼし、開示すべき重要な不備に該当すると判断し、当事業年度末日時点における当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断いたしました。
(1)工事管理上の改善策
①工事状況月報により報告する出来高の内容精度の向上化
②工事現場の状況変化に係る経緯、現状、理由等の記録・報告化
③上位者の決裁の適時・適正化
(2)不適切な会計処理を防止するための組織上の改善策
①工事現場の抜き打ち調査・監査の導入
②監理室の拡充
③現場社員の弁護士等の法律専門家への随時相談体制の構築
④現場社員の公認会計士等の経理専門家への随時相談体制の構築
⑤部署に応じた研修会の実施
⑥営業段階から工事(現業)部門も参加した社内協議体制の構築
日本コンベヤ株式会社
H21.3,H22.3,H23.3,H24.3
当社は、椿本興業株式会社(以下「椿本興業」という)が平成25年3月18日付で開示した「当社従業員による不正行為について」に関して、椿本興業担当役員から当社取締役に、不正行為が疑われる取引の一部(以下「当該取引」という)に当社との取引が含まれているとの連絡がありました。その内容把握のために同年3月28日に社内調査委員会(委員長:当社代表取締役社長 西尾佳純)を設置し、調査を実施しました。
同調査の結果、当社において首謀者あるいは共謀者であることを示す事実は発見されず善意の第三者と考えますが、当社装置システム部と椿本興業との取引の一部に実在性の無い取引が含まれていることが判明しました。椿本興業の社会的信用力から当該取引を受注したこと自体に合理性が無いとまでは言えないものの、結果的に不適切な取引を発見できなかった点につきましては、コンプライアンス上の重大な問題と認識しています。
これに伴い当社は、当該取引による過年度決算への影響額を調査し、過年度の決算を訂正するとともに、平成20年3月期から平成25年3月期第3四半期までの有価証券報告書、半期報告書及び四半期報告書について訂正報告書を提出しました。
これらの事実は、このような不適切な取引が未然防止あるいは発見できなかった点において、役職員のコンプライアンス意識が希薄であったこと、装置システム部における受注承認や与信管理、取引先の業況確認といった管理体制が十分に機能していなかったこと及びモニタリングが不十分であったことによるものです。
以上のことから、当社の全社的な内部統制及び業務プロセスに関する内部統制に開示すべき重要な不備(重要な欠陥)があったため、当該不適切取引が防止されず、かつ発見に遅れを生じさせたものと認識しています。
上記事実は当事業年度末日後に発覚したため、当該不備を当事業年度末日までに是正することができませんでした。
(1)全役員、全社員のコンプライアンス意識の向上
(2)社内諸規程、手順書の整備
(3)社内管理体制の見直しと受注承認プロセスの見直し
(4)内部監査機能の強化

Source:開示情報「内部統制報告書」「訂正内部統制報告書」などをもとに作成

注:情報の検索範囲の網羅性については検証していません。あらかじめご了承ください。