【読書感想】決算早期化が実現する7つの原則

今年の3月決算会社の決算発表も一段落しました。上場している会社にとっては、制度的なメリット(直接金融)を享受する見返りとして、株主・投資家へ継続して適切な開示を可能とするように、内部管理体制を整備しなければなりません。また、上場・非上場に関係なく、経営判断の基礎となる経営情報をスピーディーに入手したいという内部の管理ニーズがあり、それを決算精度のアップや効率化と両立させることが求められます。

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3月決算会社の決算発表の状況はいずれ東証から公表されると思いますが、タイミングが良いのか、直近では決算早期化セミナーの開催もいくつかあるようです。今回は、今後決算早期化に取り組んでいきたいと思われる会社にとって読んでおきたい書籍をご紹介します。

決算早期化が実現する7つの原則(武田雄治[著])

本書は、著者の武田雄治氏にとって3冊目となる決算早期化の書籍です。これまでの2冊の早期化に関する書籍や多数のセミナーを通じて、著者の決算早期化のアプローチが、多くの企業の決算早期化の取組みに貢献しているところは広く知られています。

ここでは、これから本書を読む方(読み返す方)のために私が印象に残った点を以下にご紹介します。

経理部は情報製造業

著者は経理部を次のように定義しています。

経理部とは、社内外から入手した情報を「加工」し、各利害関係者の求めに応じて、情報を提供(=報告)する部署である。(P6)

一般に、業務プロセスをフローチャートなどでモデリングするとき、業務機能の連鎖でその流れを表現しますが、流れには「商流」「物流」「金流」「情流」の4つがあります。営業部門や製造部門など上流のプロセスでは「商流」「物流」「情流」を中心に業務が流れ、会計取引として記録された情報が経理部門にあがってきます。経理部門では、その情報を変換・集計など加工処理を行い会計帳簿に記録していきます。つまり、経理部門が取り扱うのは基本的に「情流」(と一部「金流」)になります。

本書では、決算早期化として30日以内開示をしている会社の特徴は、単体・連結決算が締まってから開示するまでの期間が短い、という点に注目して、経理部門の業務の性質である「情流」を、いかにスムーズに流して決算短信などの最終アウトプットを早く出すか、という部分に力点をおいています。

アウトプット資料の整備方法を見直す

また、著者は「情報製造業」と対比する形で、単に伝票起票だけ、決算締めだけで終わるような「情報倉庫業」になってはならないとしています。

アウトプット資料の作成とは、試算表を起点として、最終成果物につながる開示基礎資料までをつないでいく「編集作業」ともいえます。(P25)

業務機能は、何らかのインプットをもとに、価値あるアウトプットに変換するしくみのことを言います。決算早期化で阻害要因(ボトルネック)となったプロセスで生じているのは、必要なインプットが揃わない、または(言い換えれば)アウトプットが次の工程にそのまま利用できないという状況と言えます。

本書では単体決算の試算表、連結決算の試算表をインプットに、最終のアウトプットである開示資料までを一気に繋げるように、その内部の業務処理を整備する、つまり、業務処理の短縮化と、アウトプット情報を次工程のインプットとして連携させる(分断させない、漏れがないようにする、余計な作業をしない)しくみを作ることを主張しています。

属人化の排除

具体的には、分析資料としてリードシートの作成と、それをもとに勘定明細・開示基礎資料とがリファレンスを取れる状態に業務プロセスを整備します。つまり、情報をシームレスにすることで決算業務プロセスの整流化を図るよう提言しています。30日以内開示を達成するために、経理部門の決算業務をどのように最短化することができるかを考えた手法です。

経理業務は専門性も強く、人に仕事がついてまわることが多いのですが、それを単純化・標準化することによって、最低限の経理スキルを持つ担当者であれば遂行できるしくみに作り替えるべきとしています。

最終の開示資料(アウトプット)から経理部門の決算業務をスクラップ・アンド・ビルドするという考え方は思いついても、これに具体的なツールと合わせて実務への落とし込みが可能なレベルで提言しているのは、著者が初めてだと思います。

過去の書籍を含め、これら具体的な方法がわかり易く説明されていますので、著者の決算早期化の書籍を読んで、自力で早期化することができた会社があるというエピソードにも頷くことができます。

あとは決断と実行あるのみ

本書には、経理部門が決算早期化に取り組むうえで、常に持ち続けてもらいたい著者の想いが原則としてまとめられています。本書を読んで、自社の中で経理勉強会をするのも良いですし、もしくはすでに決算早期化を経営課題の一つと捉えている会社であれば、まずは本書の原則7にある【ワークシート】1から7を記入してみることをオススメします。そうすればおよそ、決算作業の全体工程の中で、早期化対象とすべき決算業務プロセスを特定することができるはずです。

中でも【ワークシート1】現状の決算スケジュールの記入は、情報の鮮度が高いうちに記入すべきシートです。3月決算会社で、この3月期の決算を踏まえて今後早期化に取り組もうとしているのであれば、何はともあれこのシートを埋めておきましょう。

セミナー受講と同じで、聞いて終わり、読んで終わりではなく、ここから一歩を踏み出してみることが大事ですね。

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Akiyoshi KANEKO

業務プロセスを可視化(モデル化)し、その可視化されたドキュメントを中心においてプロジェクトを推進するアプローチを提唱している。経理・財務分野を主な専門領域として、業務プロセスの改善やシステム構築、組織体制の整備に関するコンサルティングに従事。プロジェクト現場では、「お互いの仕事を理解する」「現状の課題を共有する」「考えていることを相手に伝える」「新しいしくみを共有し実行まで落とし込む」よう関係者間の橋渡し役として活動する。著書『内部統制評価にみる「重要な欠陥」の判断実務』『阻害要因探しから始める決算早期化のテクニック』
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