開示すべき重要な不備の事例(2014年4月公表)

2014年4月に内部統制報告書における開示すべき重要な不備の事例です。経営者の評価結果で、開示すべき重要な不備などがあり内部統制は有効ではないとした企業の事例をご紹介します。

Control

開示すべき重要な不備などの概要

ウチダエスコ

ソリューションビジネス事業部で、プロジェクト別の個別原価計算を実施する工数・原価管理システムにおいて、実際の作業時間とは異なる時間数を日報に入力することにより、各プロジェクトの労務費を意図的に操作して利益の過大計上をはかる不適切な会計処理がありました。

具体的に次の2つの方法で、不適切な会計処理は行われていました。

  1. 期中に完成・売上計上したプロジェクトに賦課すべき原価を、期末現在未完了の工事進行基準が適用されるプロジェクトの原価に付け替えることにより、売上を計上し、その結果、利益を過大に計上する。
  2. 期中に完成・売上計上した工事案件の原価を、工事完成基準が適用されるプロジェクトの期末未完成の案件の仕掛品勘定へ振替えることにより、利益を過大に計上する。

調査報告書では、管理職レベルから各課員レベルまで予算達成の意識が広く共有されており、このような状況から、管理職レベルにおいて自己の担当部署の予算達成を不適切な会計処理を行ってでも図ろうとする誘因が働くとともに、各課員も不適切な会計処理を行うことに対して多少の疑問を持ちながらも、それに加担することとなったとしています。

また、工数・原価管理システムにおける日報への作業時間の入力を操作することにより、労務費の金額を容易にコントロールできる環境となっており、それが不適切な会計処理を誘発したと考えられるとのことです。

さらに、当該事業部のうち、地方自治体向けのプロジェクトは、工期が長く、受注額も大きい傾向があることから、小規模のプロジェクトと比べ、プロジェクト間で作業時間を付け替える余地が大きく、利益も大きく増加させることが可能なため、不適切な会計処理の対象となりやすい傾向にあるとしています。

会社は、平成23年7月期から平成24年7月期までの訂正内部統制報告書を提出し、開示すべき重要な不備があり、内部統制は有効ではないと報告しています。

日本アセットマーケティング

会社は、ソフトウェアの販売取引に係る売上を4000万円計上する一方、この販売取引の販売代理業務に係る仲介手数料2000万円を費用計上しましたが、販売代理契約に基づく業務を行った事実はなく、会社は4200万円の販売代金を受領したものの、販売代理業務に係る対価として仲介業者へ支払った2100万円については、そのうちの82%に相当する1722万円が、最終的に販売先に還流していました。

背景には、代表取締役社長が、平成24年3月期の売上高が1億円に達しなければ上場廃止基準に該当することを認識しており、何らかの方法で平成24年3月末日までに売上高を1億円に到達させる必要があったとのことです。

論点となったのは、一つは販売取引の実在性です。調査報告書では、当該販売取引と同種のソフトウェアの販売実績があり、本件ソフトウェアが経済的便益を有する販売対象物として実在していたことを前提に、

  1. 本件ソフトウェアが実際に販売先に納入された上でインストールされているため、本件ソフトウェアに係るリスクと経済価値は販売先に移転しており、
  2. 売主(会社)による買戻条件や収益保証などによる継続的な関与は見受けられず、
  3. 対価としての経済的便益が売主に流入していると考えられるため、

その限度においては、本件販売取引の実在性は認められるとしています。

その一方で、販売取引の取引価額に係る評価の妥当性について、仲介手数料はあらかじめ、少なくとも販売先と仲介業者との間の合意により販売先に返還されることが予定されていたとし、実際に2100万円(税込)のうち1722 万円(税込)が還流していることから、当該還流は、販売条件の決定時から考慮されており、かつ、仲介手数料としての実在性が認められないため、売上代金の一部返金という性格を有するものとみるべきであるとしています。

本件販売取引が行われた当時、会社の従業員は5名しかおらず、役員・従業員を含めた会社全体としての事業運営の体制は極めて脆弱であり、ビジネスに最も精通した代表者個人に形式的にも実質的にも業務執行に関する権限が過度に集中していたようです。

会社は平成24年3月期の訂正内部統制報告書を提出し、開示すべき重要な不備があり、内部統制は有効ではないと報告しています。

また、東証からは5月15日に上場契約違約金及び改善報告書の徴求が出ています。

なお、会社は、平成25年3月1日、ドンキホーテHDの間で資本業務提携契約を締結し、同社の連結子会社となっています。今後、同社のグループコンプライアンスの適用を受けて体制を確立していくと思われます。

開示すべき重要な不備の一覧

会社名
決算期
開示すべき重要な不備の内容
開示すべき重要な不備の是正方針
付記事項
特記事項
ウチダエスコ株式会社
H25.7、H24.7、H23.7
平成26年7月期第2四半期の決算手続き中であった同年1月末に、当社ソリューションビジネス事業部(以下、SB事業部とする)公共営業部において、原価付け替えによる不適切な会計処理が発覚いたしました。当社は、この事態を厳粛に受け止め、直ちに社内調査を開始し、不適切な会計処理が行なわれた時期と影響額の把握を開始するとともに、代表取締役社長を委員長とした社外の弁護士等を含む調査委員会を設置し、不適切な会計処理が行なわれた経緯並びに原因調査を実施しました。
当該調査の結果、今回の不適切な会計処理は、SB事業部で行なっている受注制作ソフトウェアに関わる個別原価計算プロセスにおいて、SB事業部公共営業部に所属する数名の課長が各プロジェクトの担当者に対して、日報データの作業事実とは異なるプロジェクトへの付け替え指示を行い、その結果、利益の期間帰属を不当に操作していたこと並びにこの不適切な会計処理が平成23年7月期第3四半期から行なわれていたことが確認されました。
これに伴い当社は、過年度の決算を訂正するとともに、平成23年7月期第3四半期から平成26年7月期第1四半期までの有価証券報告書、四半期報告書の訂正報告書を提出いたしました。
今回の不適切な会計処理は、SB事業部公共営業部に所属する数名の課長が上司から強い業績プレッシャーを受け、当日での日報データ登録を原則としていたものの運用上は1ヶ月以内での登録を許容していたことを悪用した行為であり、SB事業部の管理職以下のコンプライアンス意識が希薄であったことに加え、SB事業部固有の個別原価計算プロセスに対するモニタリングが不足していたことが原因であると分析しています。また、今回の調査過程におけるヒアリングにおいて、内部通報制度を十分に理解していない社員がいることも判明しており、内部統制を含めた同制度の周知不足により、今回の不適切な会計処理が早期に発見されなかったものと考えます。
以上のことから当社は、全社的な内部統制およびSB事業部の業務プロセスの一部に開示すべき重要な不備があり、当該不適切な会計処理が行なわれ、かつその発見に遅れが生じたものと認識しております。
①SB事業部に所属する全社員を対象としたコンプライアンス教育の実施
②SB事業部に所属する全社員に対して、部長、課長及び一般社員の役割に応じたコンプライアンス自己点検を新たに実施(年4回 四半期毎)
③SB事業部から独立した社長直轄の「プロジェクト管理室」の設置(個別原価計算プロセスに係る適時なモニタリングの強化)
④SB事業部で開催する月次定例会議の質的改善(プロジェクト進捗情報の共有・評価)
⑤SB事業部に所属する全社員を対象とした個別原価計算制度に関わる教育の実施
⑥賞与制度(業績に連動した成果の配分方法)の見直し検討(タスクフォース設置)
⑦全社員に対する内部通報制度の周知徹底
⑧個別原価計算システムのIT統制強化(データの登録・修正権限の制限等)
日本アセットマーケティング株式会社
H24.3
当社は、平成24年3月期における適切な会計処理が行われていなかったとの外部からの指摘を受けたことから、当社において不適切な会計処理が行われた疑いが明らかとなりました。
そのため、過去の会計処理について徹底した調査を行い、不適切な会計処理の有無を明らかにし、会計処理の客観性及び信頼性を確保することなどを目的として、平成26年2月26日、利害関係のない弁護士及び公認会計士による第三者委員会を設置し、調査を進めてまいりました。
平成26年3月28日付で同調査委員会より調査報告書の提出を受け、当社において売上の不適正な計上が行われていた事実が判明いたしました。
これらの事実は、社内のコンプライアンスに対する理解や意識が十分ではなかったこと、監査役及び内部監査室の監視、牽制機能が十分に働かなかったことなどによります。以上のことから当社は、売上プロセスの一部に重要な欠陥があり、当該不適切な会計処理が行われ、かつその発見に遅れが生じたものと認識しております。
本件に関する当社の対応として、平成24年3月期(第13期)の決算を訂正し、当該訂正が影響する平成24年3月期(第13期)から平成25年3月期(第14期)までの有価証券報告書、四半期報告書について訂正報告書を提出いたしました。
(1)コンプライアンス体制の確立
①人員体制の刷新
②コンプライアンス委員会の活用
③コンプライアンス教育・研修の活性化
④株式会社ドンキホーテホールディングスによるグループコンプライアンスの適用
(2)監査体制の強化
①監査役監査の充実化
②監査役と内部監査室の連携強化
③内部監査室の構成員の見直し
④監査方法の工夫
⑤会計監査人による監査の強化
(3)新規取引締結の際の稟議システムの改善
①稟議承認者の増加措置等
②内部監査室担当者の稟議承認を必須とするルールの導入

Source:開示情報「内部統制報告書」「訂正内部統制報告書」などをもとに筆者にて作成

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Akiyoshi KANEKO

業務プロセスを可視化(モデル化)し、その可視化されたドキュメントを中心においてプロジェクトを推進するアプローチを提唱している。経理・財務分野を主な専門領域として、業務プロセスの改善やシステム構築、組織体制の整備に関するコンサルティングに従事。プロジェクト現場では、「お互いの仕事を理解する」「現状の課題を共有する」「考えていることを相手に伝える」「新しいしくみを共有し実行まで落とし込む」よう関係者間の橋渡し役として活動する。著書『内部統制評価にみる「重要な欠陥」の判断実務』『阻害要因探しから始める決算早期化のテクニック』
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