マイナンバー制度各論-個人番号の提供の要求

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今回のテーマは、番号法上の保護措置及び安全管理措置について各論として解説されている項目のうち「個人番号の提供の要求」を取り上げます。ガイドライン案(事業者編)と同時に公表されている、「特定個人情報保護ガイドライン検討会(事業者グループ)等において寄せられた質問に係る考え方」を引用をしながら解説します。

*2014年12月11日に確定したガイドラインが公表されています。「特定個人情報保護ガイドライン検討会(事業者グループ)等において寄せられた質問に係る考え方」の一部は、Q&Aとしてガイドラインとともに公表されています。以下の記事内では用語等の一部訂正を実施しました(12月22日)

個人番号の提供の要求

提供の要求

事業者は、番号法の規定を根拠に、個人番号関係事務を行うため、本人等から個人番号の提供を受けることができます。

例えば、従業員等に対して給与の源泉徴収事務、健康保険・厚生年金保険届出事務等に必要な個人番号の提供や、講演料・地代等に係る個人の支払先に対して支払調書作成事務に必要な個人番号の提供を求めることができます。

また例えば、従業員等に対して給与の源泉徴収事務のため、扶養親族の個人番号を記載した扶養控除等申告書の提出を求めることもできます。

提供を求める時期

事業者は、個人番号関係事務が発生した時点で個人番号の提供を求めることが原則です。しかし、本人との法律関係等に基づき、個人番号関係事務の発生が予想される場合には、契約締結時等事務の発生が予想できた時点で、個人番号の提供を求めることが可能であると解されます。逆に、契約内容等から個人番号関係事務が明らかに発生しないと認められる場合には、個人番号の提供を求めてはいけません。

以下、特に提供を求める時期に注意をして、関連した質問と考え方をみてみます。

雇用契約の締結と個人番号

(質問)

事業者は、「内定者」に個人番号の提供を求めることはできますか。

(考え方)

内定者は、未だ事業者と雇用関係が無く、また、内定を辞退することもあることにかんがみれば、個人番号関係事務を処理するために必要があるとはいえませんので、提供を求めることはできません。

従業員等に対して、雇用契約の締結時点で個人番号の提供を求めることも可能であると解されますが、内定者はまだ個人番号関係事務が発生するとは言い切れないということです。例えば、内定者が確実に雇用されることが予想される段階(内定通知があり、入社に関する誓約書も提出がある場合等)には、その時点で個人番号の提供を求めることができると解されます。

雇用契約の時点で発生が予想できる個人番号関係事務とは、従業者等の給与の源泉徴収事務、健康保険・厚生年金保険届出事務等及びこれらに伴う給与所得の源泉徴収票、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届等の作成事務が該当します。

不動産賃貸借契約と個人番号

(質問)

不動産使用料の支払調書の提出が必要かどうかは、その年の最終支払後、名寄せ作業を行って確認しています。そのため、契約時点では支払調書提出の要否が確定しません。名寄せ作業後、支払調書の提出が不要になった方の個人番号であっても、次回の名寄せ作業では提出対象となる可能性もあるため、保有することは認められますか。

(考え方)

・・・一方、不動産の賃貸借契約については、通常、契約内容で一カ月当たりの賃料が定められるなど、契約を締結する時点において、既にその年度に支払う額が明確となっている場合が多いと思われます。したがって、契約を締結する時点で、契約内容によってその年度の賃料の合計が15万円を超えないことが明らかな場合には、支払調書の提出は不要と考えられますので、契約時点で個人番号を取得することはできません。

また、年度の途中に契約を締結したことから、その年度は支払調書の提出が不要であっても、次年度は支払調書の提出が必要とされる場合には、次年度の支払調書作成・提出事務のために当該個人番号を取得することは可能です。・・・

地代等の支払事務及びこれに伴う支払調書の作成事務においては、通常、支払調書の作成・提出事務が発生することが予想できるとしています。したがって、賃料の金額により契約時点で支払調書の作成が不要であることが明らかである場合を除き、契約時点で個人番号の提供を求めることになります。

非上場会社の株主と個人番号

非上場会社の株主に対する配当金の支払事務及びこれに伴う支払調書の作成事務は、所得税法の規定により支払の確定の都度、個人番号の告知を求めることが原則です。ただ、当該株主が株主としての地位を得た時点で、個人番号関係事務の発生が予想できますので、個人番号の提供を求めることも可能であると解されます。

ここでは、株式と配当に関連して二つほど質問と考え方をみておきます。

(質問)

親会社が、子会社の従業員に対しストックオプションを交付しています。対象者は毎年異なり、入社初年度でも付与される可能性があります。交付されたストックオプションに関しては親会社で支払調書の作成が必要となるため、その事務処理に当たっては個人番号が必要となります。この場合、親会社は、従業員が子会社に入社した時点で個人番号の提供を求めることはできますか。

(考え方)

子会社の従業員等となった時点で、子会社との雇用関係に基づいて親会社からストックオプションの交付を受けることが予想され、個人番号関係事務を処理する必要性があるものと認められますので、親会社においてはその時点で個人番号を取得することが可能であると解されます。

たしかに、このケースでは入社時点で、個人番号関係事務の発生を予想できますが、親会社が子会社の従業員等の個人番号を取得するケースが他にあれば良いものの、ストックオプションの制度運用のためだけに個人番号を取得・管理するというのは手間ですね。

(質問)

従業員持株会において、個人番号を利用することになると思いますが、従業員が所属会社に入社した時点で、持株会は個人番号の提供を求めることはできますか。

(考え方)

前提となる事例の詳細が定かではありませんが、持株会と所属会社が別組織であることを前提としますと、従業員等がまだ株主となっていない時点では、個人番号関係事務の処理のために必要がある場合とはいえないので、持株会が従業員等に個人番号の提供を求めることはできません。少なくとも、従業員等が株主となり持株会に入会する時点でなければ、その従業員等に対し、個人番号の提供を求めることはできないと解されます。

また、持株会が個人番号の収集・本人確認事務を所属会社に委託している場合を除き、持株会が所属会社経由で従業員等の個人番号の提供を受けることはできません。

このケースでは従業員等が持株会に入会する時点で、個人番号関係事務の発生が予想されますので、タイミングは入会時点となります。

以上のように、個人番号の提供の要求にあたっては、契約内容等から個人番号関係事務が明らかに発生しないと認められる場合には、個人番号の提供を求めてはいけないというのがポイントです。

注:本記事は私個人の備忘録もかねています。今後、更新・追加されるガイドラインやFAQなどによって適宜内容は加筆・修正していきます。実務への適用にあたっては、関連する法令・ガイドラインなどの公表物をご自身でもチェックをお願いします。

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Akiyoshi KANEKO

業務プロセスを可視化(モデル化)し、その可視化されたドキュメントを中心においてプロジェクトを推進するアプローチを提唱している。経理・財務分野を主な専門領域として、業務プロセスの改善やシステム構築、組織体制の整備に関するコンサルティングに従事。プロジェクト現場では、「お互いの仕事を理解する」「現状の課題を共有する」「考えていることを相手に伝える」「新しいしくみを共有し実行まで落とし込む」よう関係者間の橋渡し役として活動する。著書『内部統制評価にみる「重要な欠陥」の判断実務』『阻害要因探しから始める決算早期化のテクニック』
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