このたび原価計算のプロを目指す『工場利益管理の実務』(中央経済社)が刊行されました。

著者は私が前職時代にお世話になった先輩会計士です。これまで一貫して製造業における工場の原価計算・原価管理のコンサルティングをしてきた方で、今回そのコンサルティング経験を一冊の本にまとめたいという相談を受けたのがきっかけでお手伝いをさせていただきました。

経営者・工場経理担当者・製造管理者・設計者・製造技術者から実際に耳にした疑問と誤解を解き明かすように工夫されています。

(著者まえがきより)

工場業績はなぜわかりにくいのか?

製造業の経営者と工場経理担当者や工場長などの工場長などの工場管理者の工場業績、在庫や製品原価に関する議論を聞いていると、お互いの話にピントきていない状況やうまく噛み合っていない状況が多いと感じられます。

このような状況が生じる原因はいくつか考えられますが、製造業の会計上の業績をわかりづらくしている大きな要因は、原価計算のルールにあるといえます。財務会計上の原価計算だけでは製造業の業績は管理しきれず、業績を適切に表しきれないといえます。つまり、この管理上不十分な点を理解しないと、会計上計算される業績(損益)の意味も理解できないということになります。

(よくある疑問と誤解の例)

  • 工場に原価計算制度・システムを構築したのに原価管理に役立っているとは思えない。
  • 儲かるように価格設定をして販売しているのに、決算をすると、赤字になったりする。
  • 社長や上司に工場の業績報告をすると、「え、そんなはずないんじゃない?」といわれる。
  • 上司や現場管理者に「原価差額分析」の結果を説明しても理解してもらえない。
  • 各職場に「原価差額」を改善するよう依頼しても無視されるので経理担当者として困っている。
  • 販売価格を前提に設計して原価見積をしたが、儲かっていないから再設計しろといわれた。
  • 生産性を上げるためにまとめ生産をしたら、「余計な在庫を造るな」と怒られた。