中小監査事務所がフルマネージド型のクラウドVDIを利用する理由

こう暑い日が続くと体力も消耗します。先日、ランチで利用したお店では、地元産の赤紫蘇を使ったジュースを提供していました。炭酸で割りましたが、喉の乾きを癒すとともに、夏バテ防止にも良さそうです。

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ボクが、今の組織で情報システム・セキュリティの仕事に関与することになったのは約5年前です。コンサルティングワークを通じてシステム構築案件はいくつも経験がありましたが、外部からユーザの立場で関与していましたので、システム分野の専門的なバックグラウンドがあるわけでもなく、ましてや監査事務所のITインフラの業界常識は知る由もなく、という状態でした。

ただ、ボク自身がクライアントの情報システム構築をサポートする中、肌で感じていたのは、システム構築のパラダイムシフトが起きていることでした。従来型のシステム開発やパッケージソフトウェアを利用したシステム構築から、クラウドサービスを利用したシステム構築への流れの中で、情報システム部門の存在意義、すなわちシステム開発者と利用者の橋渡し役としての役割内容の質的な変化です。

クラウドサービス、特にSaaS型のクラウドサービスのようにインターネット環境で簡単に申込みができ、アカウントを作成後に少しの初期設定をすればすぐに利用可能なシステムが出てくると、システム構築の主体が利用者側にシフトしてきます。そうであれば、ボクのように、システムの企画から構築、運用保守のライフサイクルを、ユーザの立場で関わってきた経験が活かせるのではないかと思いました。

特にこれからの中小監査事務所では、クラウドサービス利用の巧拙が事務所経営の合理化に影響すると考えています。

そのような想いで取り組んできた活動成果の一つが、先日の日経BP社の記事でも取り上げられました。

もちろん、VDIそのものは以前から大手監査法人でも採用されているもので、新しい技術ではありません。今回の新型コロナウィルスをきっかけとした在宅勤務においても、メインのシステムインフラとしてVDIが重要な役割を果たしてきました。

では、なぜ中小監査事務所にVDI導入が進んでいなかったのか。今になって記事に取り上げられる理由は何か、ということです。

それは、以前であれば、投資余力などの財政面、VDI管理・運用ための人的リソース面のハードルが高く断念していたものが、フルマネージド型のVDIサービスの登場によりハードルが一気に下がったことにあります。

ボクが、組織で情報システムの仕事に関与することになったとき、大きなテーマとしてVDI導入があり数年前から検討していました。その際、従来型のVDIを利用する選択肢もありましたが、最終的にクラウドVDI、しかもフルマネージド型のクラウドVDIを採用したのです。

実際に経験をしてわかったのは、フルマネージド型のクラウドVDIは、従来型のVDIと比較して、中小監査事務所の重要なITインフラになりうるということです。

その1つ目の理由は、インフラ構築の初期投資を抑えることができる点です。VDIサービス基盤をクラウドサービスで提供するため、サーバ購入等の高額な初期投資は不要で、ユーザ数に応じた料金で提供されます。

2つ目の理由は、データセンターの永続的な管理・運用の人的負荷を抑えることができる点です。中小監査事務所でITインフラ専任の担当者を抱えることは難しく、サーバ管理の技術的な運用管理やセキュリティ対策、障害発生時の対応をアウトソーシングできるメリットは大きいです。

3つ目の理由は、管理者向けのマネージドコンソール機能による管理の容易性です。職員の入退所に伴うVDIの作成や削除、利用アプリケーション増加やセキュリティ追加策などを雛形となるVDIイメージへの反映、職員の契約・利用形態に応じたHWスペックやランニングモードの変更などといったリクエストについて、高度な専門知識は不要で、柔軟かつスピーディに内部対応(必要があればアウトソーシング)することができます。

VDIはユーザのクライアント端末にデータが残らないため、貸与端末の紛失・盗難による機密情報の流出を防止できることから、中小監査事務所においても、もともとニーズは高かったものです。それが今回の強制的な在宅勤務要請への対応の中、急速に注目が集まっているように見受けられます。

ボクは、フルマネージド型のクラウドVDIは、中小監査事務所ほど導入がしやすいと考えています。それは事務所規模が大きくない方が、こうした新しいアイデアや取り組みを追求しやすいということ、万が一失敗しても(大きな損失を出さずに)方向転換すれば良いというのが、その理由です。