開示すべき重要な不備の事例(2014年5月公表)

2014年5月の内部統制報告書における開示すべき重要な不備の事例です。経営者の評価結果で、開示すべき重要な不備などがあり内部統制は有効ではないとした企業の事例をご紹介します。

開示すべき重要な不備などの概要

リアルコム

平成24年6月期に株式交換により全株式を取得し、連結子会社としたWWB株式会社ののれんに関する会計処理において、平成25年6月期におけるのれん評価に係る超過収益力の計算過程に修正すべき事項が判明しました。会計監査人から平成26年3月に指摘を受け、外部機関、コンサルタント会社との協議や会計監査人との審議を重ね、4月にのれん評価を訂正することを決定し、リリースしています。

なお、同社は平成24年9月に、当該株式交換に伴う取得時の会計処理の誤りに関連して、過年度決算書類の訂正と訂正内部統制報告書における開示すべき重要な不備を公表しています。

企業結合会計の処理や今回訂正の対象となったのれん評価などは、重要な非経常取引として注意を払っていると思いますが、誤りが発生すると影響も大きく、内部統制に起因した不備ということで開示すべき重要な不備に該当する可能性が高いと言えます。再発防止策は内部管理体制の強化しかないのですが、会社もより適切な会計処理の判断を行えるような体制を整備するために、経理担当者の専門知識の習得や社外専門家からの意見聴取を徹底するとしています。

以上より、平成25年6月期の訂正内部統制報告書を提出し、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効ではないと報告をしています。

リソー教育

昨年同社および連結子会社2社において不適正な売上計上が行われた事実が判明し、今年2月に、平成22年2月期から平成25年2月期の訂正内部統制報告書で開示すべき重要な不備を報告しています。本件発覚以降、事業年度末日までに十分な整備・評価期間を確保できなかったことから、平成26年2月期の通期の内部統制報告書においても、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効ではないと評価結果を表明しました。

会社は4月に再発防止策の進捗状況とコーポレートガバナンス体制の改革に関するお知らせを公表しています。また、5月の提示株主総会において、会計監査人を九段監査法人から誠栄監査法人に異動を行っています。

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東京衡機

監査法人からの指摘により、連結子会社における固定資産の減損損失の認識の判定および親会社の個別財務諸表における当該連結子会社への投融資の評価等に関して会計上の見積りの誤りがあったことが判明しました。決算作業に時間を要することになり、平成26年2月期決算短信の開示が、決算期末後50日を超えて発表を延期する見通しとなった旨、5月12日に開示しています。

定時株主総会では、招集通知に添付すべき事業報告・[連結]計算書類・[連結]計算書類に係る会計監査人の監査報告書および監査役会の監査報告書が株主へ提供することができず、報告事項の報告ができないことから、継続会を開催し報告することが決定されています。

会社は、全社的な内部統制及び決算・財務報告プロセスの一部に関する内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすことから、平成22年2月期から平成25年2月期までの4期の訂正内部統制報告書で、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効でないとしました。

なお、平成26年2月期の決算短信が5月30日に開示されています。

コーナン商事

会社は昨年11月にH22年3月期からH25年3期の訂正内部統制報告書で開示すべき重要な不備を報告しています。また、調査結果を踏まえた再発防止策を公表し、今年1月にその進捗状況(中間報告)を、さらに4月にH26年3月期の決算発表にあわせて、再発防止策の成果と今後の取組について報告をしています。

会社は、再発防止措置を講じて、内部統制の改善を図った結果、内部統制の評価基準日である事業年度末(平成26年2月28日)時点において、概ね整備は完了したものの、十分な運用期間を確保することができなかったため、全社的な内部統制の不備が解消したといえる状況に至っていないものと判断しました。

以上より、平成26年3月期の通期の内部統制報告書においても、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効ではないと評価結果を表明しました。

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開示すべき重要な不備の一覧

会社名
決算期
開示すべき重要な不備の内容
開示すべき重要な不備の是正方針
付記事項
特記事項
リアルコム株式会社
H25.6
平成25年6月期の連結財務諸表を対象とした、のれん評価に係る超過収益力の計算誤り及び関連当事者との取引の開示に対する認識誤りが発見され、のれん評価額及び関連当事者取引注記を修正する必要がある事が判明しました。
上記の誤りが発生した原因は、それぞれ該当する会計基準等に関する精読不足及び当社の決算財務報告プロセスにおける該当項目の内部統制が不十分であり、当該誤りを発見できなかったことにあると考えています。
自己啓発の奨励や計画的な外部研修の受講等により経理部門のスキルアップを図るとともに、会計処理についてのチェック・承認プロセスの見直しなどの再発防止策を講じ、内部統制の改善を図ってまいります。
株式会社リソー教育
H26.2
当社及び当社の連結子会社である株式会社名門会、株式会社伸芽会において、過年度より売上の不適正計上が行われていた事実が判明いたしました。
本件に関する当社の対応として、平成20年2月期(第23期)以降の決算を訂正し、平成20年2月期第23期)から平成26年2月期(第29期)第2四半期までの有価証券報告書、半期報告書及び四半期報告書について訂正報告書を提出いたしました。
本件は、当社の全社的な内部統制であるコンプライアンス意識の欠如及び内部通報制度の不備が原因であり、これらの不備は開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
事業年度末日までに是正できなかった理由
本件発覚以降、当事業年度末日までに十分な整備・評価期間を確保できず、当該開示すべき重要な不備を是正することができませんでした。
(1)コンプライアンス重視の経営方針の再確認
(2)組織改革によるコンプライアンス遵守体制の整備
①再発防止委員会の新設
再発防止のための諸施策の検討・立案、再発防止活動のモニタリング等を行う再発防止委員会を設置しております(平成26年3月4日付)。
客観的に第三者の視点から再発防止のための諸施策の検討・立案を図るため、委員長を外部委員である入谷淳氏(弁護士/公認会計士)とし、新たに副委員長として政木道夫氏(弁護士)を追加選任しております(平成26年3月31日付)。
再発防止委員会の下に「TOMAS再建委員会」を設置しております。それによって、退会者の皆様に対する返金について公正・公平かつ誠実な対応を進めてまいります(平成26年4月18日付)。
②取締役会・監査役会・内部監査室の機能強化
経営の透明性を高め、公平性を確保し、取締役会による業務執行監督機能を一層強化するため、平成26年5月23日開催の第29回定時株主総会において、社外取締役2名を選定しております。
コンプライアンス重視の経営方針を再確認するとともに、その実効性を確保する体制とするため、同定時株主総会において、弁護士1名を社外監査役に選定しております。
専従する内部監査室長を選任して内部監査室の強化を図り、監査役と連携した内部監査業務を開始しております(平成26年3月~)。
③管理部門の強化
管理部門の強化を図るため、同定時株主総会において、管理部門担当役員を選定しております。
④子会社に対する経営管理機能強化
当社内部監査室が直接子会社の内部監査を実施。まずは業務監査を中心とした子会社チェック機能体制を構築しております(平成26年3月~)。
(3)社内制度の改革
①人事制度の改革
短期間の営業成績だけに基づく人事評価制度を根本から見直し、各社員の適性や総合的な貢献度等を考慮した新しい人事評価制度を導入しております(平成26年4月~)。
②内部通報制度
内部通報規程を制定し、内部監査室を社内の窓口とする内部通報制度の運用を開始しております(平成26年4月~)。
継続して、外部の通報窓口についても設置いたしました(平成26年5月~)
③全役員・全社員に対する不正防止のための継続的な研修の実施
外部講師を招いて、コンプライアンス等に関する研修を実施しております(平成26年3月4日)。
今後も定期的な研修を実施するとともに、e- Learningによる全社向けの研修体制も準備しております。
(4)業務についての改革
①授業・講座に関する内容・手続の改革
②退会時の手続の明確化
未消化授業が存在する状態で退会する場合の返金手続を明確化いたしました(平成26年3月~)。
平成25年11月時点(第三者委員会の調査実施時点)の未消化授業について、対象生への返金に関する手続き、スケジュール等を明確化いたしました。
③株式会社名門会における授業に関する改革
(5)適切な会計システムの構築
株式会社東京衡機
H25.2、H24.2、H23.2、H22.2
当社は、当社の会計監査人との平成26年2月期決算監査に関する協議の過程で、平成21年2月期以降の財務報告において訂正を要する事項があるとの指摘を受け、当該指摘事項を確認・精査した結果、訂正事由の存在が判明したため、過年度の会計処理等を訂正すべきであると判断し、過年度の会計処理等を訂正するとともに平成21年2月期から平成26年2月期までの有価証券報告書及び平成24年2月期から平成26年2月期までの四半期報告書について訂正報告書を提出いたしました。
過年度の会計処理等を訂正することとなった要因は、固定資産の減損会計の適用及び関係会社株式の評価において、会計基準の理解が不十分であったこと及び会計上の見積りの客観的な実施過程を十分に保持していなかったことであります。また、連結財務諸表を作成するにあたっての体制及び手続きが不十分であったことであります。
以上のことから、当社の全社的な内部統制及び決算・財務報告プロセスの一部に関する内部統制の不備は、当社の財務報告に重要な影響を及ぼしており、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
当事業年度の期末日までに上記の開示すべき重要な不備が是正されていない理由は、訂正事項の発覚が当事業年度の期末日以降であったためであります。
(1) 決算財務報告プロセスの見直し
(2) 決算レビュー委員会の設置
(3) 会計上の見積り等決算業務に関するモニタリング強化
(4) 経理体制の拡充及びスキルアップ
コーナン商事株式会社
H26.2
平成25年9月、当社元取締役について外部より照会(仕入取引先からの不適正な資金の受領の有無、当社と同元取締役の関連当事者との取引開始の経緯等)があり、これを受けて当社では内部調査委員会を設置して事実関係の有無及びその内容の究明に着手しました。その後、同元取締役が実質経営する不動産会社が設立登記される前に当社が取締役会の承認を得ずに土地の賃借契約を結んだ事実等が報道されたため、これらも調査対象に加えるととともに、調査の客観性及び信頼性を高めるため、社内調査に加え当社と利害関係のない弁護士による「第三者委員会」を設置し、事実関係の調査分析を行いました。
その結果、平成25年11月5日付で第三者委員会の調査報告書を受領し、同調査報告書による指摘事項を踏まえ、平成25年11月15日に過年度の有価証券報告書及び内部統制報告書等の訂正報告書を提出しました。
また、当社では、上記の不祥事件を踏まえた再発防止策の一環として、新体制の下で社内の法令遵守状況や商品の品質管理状況の点検等を行っておりましたが、その過程で当社が輸入及び販売している電気用品に関して、電気用品安全法が規定する輸入事業者の義務を果たしていない電気用品があることが判明しました。このため、電気用品の安全性に係る法令上の義務を果たしていない商品について自主回収を行うことを決定しました。
当社では、上記の事態を引き起こした主な原因となった内部統制の不備のうち、当事業年度の末日における開示すべき重要な不備は、次のとおりであると認識しております。
(イ)業務分掌・職務権限が目的とする相互牽制による統制が形骸化していたこと。
(ロ)上記(イ)の状況の下で当該元取締役が当社前社長の有する権限を笠に着て、権限を集中していったこと。
(ハ)取締役・監査役による監視・牽制機能が十分に働かなかったこと。
(ニ)社内のコンプライアンスに対する理解や意識が十分でなかったこと。
(ホ)電気用品安全法の手続のチェックシステムが不十分であったこと。
(ヘ)規制法規遵守に関する責任と権限の所在が不明確であったこと。
当社としましては、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備を是正するために、再発防止措置を講じて、内部統制の改善を図り、当事業年度末時点において概ね整備は完了しておりますが、十分な運用期間を確保することができなかったため、上記の全社的な内部統制の不備が解消したといえる状況に至っていないものと判断しました。
a.組織体制の見直し
組織体制面では、平成25年12月2日付で海外商品及び国内商品の仕入や不動産開発の統括機能と内部監査部(同日付で内部監査室を改組しました。)の統括機能を明確に分離して、社長への権限集中を排除しました。新組織では、社長は内部監査部を直接統括する一方で、他の分野については6つの本部を設置し、6人の取締役が本部長として統括する体制に変更し社長への権限集中を排除するとともに、相互牽制・監視システムが有効に機能する組織に改編しました。
b.役員構成の見直し
役員構成面では、取締役の業務執行に対する監督機能の強化、経営の透明性の向上を図り、強固なコーポレートレート・ガバナンス体制を構築するため、社外取締役1名を選任しました。これにより社外役員は、社外取締役1名、社外監査役3名となりました。
c.社内規程等の見直し
社内規程等については、平成25年12月9日付で社長をプロジェクトリーダーとし関係部署の責任者をメンバーとするプロジェクトを立ち上げ、権限集中の排除、業務分掌・職務権限の明確化、相互牽制体制の強化等を目的に社内規程・マニュアル類の見直し、整備を行いました。
d.意識改革
意識改革については、平成25年12月16日付でコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンス関係の規程類の見直し、整備を行うとともに、役員向け及び本部社員・店長向けのコンプライアンス研修を実施しました。
e.内部通報制度の充実
内部通報制度については、社内の通報窓口のみでは十分に機能を発揮できないことから、既存の通報窓口及び相談窓口に加え、当社の顧問法律事務所に新たに通報窓口を設置し社内に周知しました。
f.輸入業務の改善
海外商品の輸入契約の決裁に際しては、電気用品安全法その他法令が遵守されていることを証する書類の具備を品質保証室がチェックし、品質保証室の確認がない限り、輸入できない仕組みを構築しました。
g.商品の安全性に関する管理体制の整備
商品の安全性に関する規制への取組み体制や製品事故情報等商品の安全性に関する事項が取締役会に伝わる仕組みが制度的に担保されていなかったため、商品の安全性に関する事項で特にコンプライアンスにかかわる事項は取締役会における報告・議論の対象としました。

Source:開示情報「内部統制報告書」「訂正内部統制報告書」などをもとに筆者にて作成