会計士が監査法人で自分の専門性をつくるための3つのアクション

知人がつくる国分寺野菜は、不定期ですが地元のお店でマルシェを開催します。今回はパン屋でプチマルシェを開催するというので、野菜に加えてパンも買いたくて行ってみました。リロケーションしたばかりのお店で、知人とは幼馴染みだそうです。こうした異業種間の協力もいいですね。

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会計士試験の合格発表があり、試験合格者にとっては、ホッとすると同時に、就職活動・補習所手続き・仕事始めなど、バタバタと忙しくなります。

さて、監査法人のリクルートパンフレットを読んだ合格者が、「最初からやりたいことが決まっていない」、漠然とでもしたいことがあった合格者が、複数の法人の面接で話を聞くうちに、「いろいろなことをしてから専門性を見極めたい」といった話をしているのを聞きました。

試験には合格しましたが、監査実務の経験はここからスタートです。やりたいことも磨きたい専門性も、これから決めて行ければいい、ぐらいに思ってください。眼の前の仕事をこなすうちに見えてくるので大丈夫です。

会計士の資格の良いところは、その試験科目が企業の活動に関連するよう幅広い領域をカバーしているところです。

実務で新しいことにチャレンジしようと思った時に、受験勉強時代に学習した知識が活きますが、実際にはそれをベースにさらなる学習と実務への適用が求められます。

ですので自分のやりたいことや専門性を見いだすためには、監査実務を学びながらも、いろいろな領域にチャレンジするための機会を得ることが必要です。

ここでは監査法人に所属しながらできる、専門性をつくるための三つのアクション(可能性の拡げ方)について記述していきます。ボク自身のコンサルティングファーム、監査法人での経験を織り交ぜています。

一つ目は社内営業のススメです。
入所して一緒に仕事したいと思ったマネージャーには声をかけてみましょう。そのマネージャーが担当している仕事・分野に興味がある、同僚から○○さんと仕事すると勉強になる、といったようなきっかけで十分です。
マネージャーは、それぞれキャラクターがあって、クライアントとの接し方やアウトプットの作り方など、他の人にはない個性を持っています。日頃、仕事してみたいマネージャーに働きかけておけば、チームを編成するときに声をかけてくれるかもしれません。
そしてできるだけ現場に一緒に連れて行ってもらいましょう。マネージャー先輩の振舞いをそばで見ることにより多くのことを学べます。キャラクター(個性)は真似できなくても、チームマネジメントや仕事の進め方など、汎用的かつ本質的なことは取り入れることができます。
こうした社内営業をすすめるのは、監査以外のキャリア開発のきっかけにもなるからです。監査事務所によっては、転職をすることなく、コンサルティング・FAS・税務などグループ含む他のエンゲージメントに関与することができます。そうした過程で自分に向いている職種・分野を見出す人もいます。
また、会計士協会の委員の仕事や国際ネットワークファームのグローバルミーティングなどに参加する機会もあればさらに活動の幅が拡がります。

2つ目はナレッジとしてのアウトプットのススメです。
入所後に知識としてインプット・蓄積したことや実際に経験したことを、ドキュメントなどにアウトプットする機会を意識して持ちましょう。
例えば、新しいサービスラインを立ち上げたり、方法論を開発したり、基準や制度対応のパイロットプロジェクトに参画するのは、法人内でその分野の専門家として認知される恰好の機会です。
また、事務所内部の研修会講師やクライアントなど外部向けのセミナー講師も、自分の活動の振り返りや知識の整理・定着に役立ちます。
さらに書籍の執筆や専門雑誌への寄稿といった取り組みもあります。ここまでできると業界内で特定領域の専門家として認知されるきっかけになります。
これらの取り組みのきっかけは、毎年のように事務所内で発生しています。そのような機会に対して、まだ自分は早いからとか、将来その分野の専門家になってからにしようとか、遠慮してやり過ごすのはもったいないです。特に旬なテーマでは、始めから専門家などはいませんので、部分的に担当したり、メインの人を補佐したり、どんなレベルでも構わないので、自分の関心とタイミングがあったときに、手を挙げる勇気を持ちましょう。
やりたいことを見つけ、専門性を見極めた人は、結果としてそうなる前に、方向性を見出したり、チャンスを掴む能動的なアクションがあった人です。

最後3つ目は組織外の接点と活動のススメです。
どんなに組織内で競争しても、接点をもてる他の専門家の数は限られます。自ら組織(事業部・部門含む)外にある情報の交差点にも、意識して自分の身を置きましょう。
例えば、会計士協会の委員会やワーキンググループ、任意でつくられる他の法人メンバーを含むコミュニティなどがあげられます。
あるテーマに関する専門家同士の意見交換や情報交換から、組織内の検討だけでは出なかった事項に気づくときもあります。他流試合のように、組織外の人と話すことが自分の専門的能力の市場価値を推し測ったり、磨いたりする機会となります。
協会活動に限らず、最近、流行っているコミュニティやサロンといった共同体を活用する方法もあります。法人形態をとらずとも、熱量のある人たちが、それぞれの得意領域を持ち寄り、ほとんどリスクなく活動の場をつくることができます。
こうした組織外の活動には、時間的な制約がつくと思いますが、その成果を組織に還元することができれば、個人も法人もメリットがある話となります。

繰り返しになりますが、会計士の資格の良いところは、その試験科目が企業の活動に関連した幅広い領域をカバーしていることです。

  • 企業が活動する外部環境要因を踏まえ(経済学)、戦略を立案して組織を編成し実行に移す(経営学)。
  • 活動した成果を測定して外部報告をつくり(財務会計)、税金を納める(租税法)。
  • 業績を分析して次の戦略・活動の意思決定をする(管理会計)。
  • これらの活動にあたっては法律を遵守し(企業法)、外部報告について監査も受ける(監査論)。

これほど広くビジネスに関する素養を試験科目に設定している資格はありません。ですので、いろいろな道に進むポテンシャルがあります。

そのような中、試験合格者の多くは、一旦は、監査法人に所属します。就職活動の結果、内定をもらい入所した法人が、自分にとって「縁」のあった法人です。
組織内外のリソースを活用して、自分の付加価値の向上に繋げられるかは自分次第になります。周りにあるリソースを大きく叩けば自分にも大きく跳ね返ってきますし、小さく叩けばそれなりにしか見返りはありません。

上記のようなアクションを意識して実行することで、監査法人内でキャリアを積んでいくだけでなく、個人として独立したり、事業会社へ転職したりしても変わらず自己研鑽できるコツを身につけることができます。