ユナイテッドアローズの商品管理システム構築の事例にみるパッケージ選定

ITmediaに、ユナイテッドアローズの次期商品管理システム構築記事が出ていました。業績が好調なアパレルブランドの裏側には、“スタッフも感動させた”基幹業務システムがあったと報じています。

ユナイテッドアローズはなぜ好調か、その裏に「ユーザーを感動させる」新ITシステム(ITmedia)

ユナイテッドアローズからは昨年5月に、次世代基幹業務システムに関わる改革である「UA 2.0」の実現に向け、「次期商品管理システム」構築にかかる作業に着手したことが発表されています。2014年以降、段階的に稼働をしたようです。

株式会社ユナイテッドアローズ、アクセンチュアの協力のもと、次期商品管理システムの構築に着手(ユナイテッドアローズ)

パッケージソフトウェア製品/ベンダーの選定でRFPを片っ端から提示するのは非効率

システム構築でパッケージソフトウェア製品/ベンダーを選定する際に、現在はRFP(提案依頼書)を作成する企業が多くなっています。システム要件を明確にして提案を受けることは大事なことですが、RFPの提示から提案書の受領、提案内容の評価といった選定作業自体そのものの作業負荷は軽くありません。

会計システム一つとっても、市場には数多くのパッケージソフトウェア製品が出回っています。こうした状況において、気になった製品や使えそうな製品に片っ端からRFPを提示するのは非効率です。

先日もパッケージソフトウェア製品/ベンダーの選定を実施している企業の方から、最初は2社に依頼していたRFPが、今は6社まで増えている話を聞きました。直接のご相談の内容は別の話でしたので、突っ込んだことは言えなかったのですが、大丈夫かなと思ったことがありました。

パッケージソフトウェア製品/ベンダーの選定ではクライテリアを明確にして、段階的に絞る

では、どのように選定作業を進めるかというと、選定のクライテリア(評価基準)を明確にして、段階的に絞り込み、絞り込んだ製品/ベンダーにRFPを提示するのが効率的な進め方になります。

例えば、市場に出回っている製品の情報をWebやカタログベースで収集して同業種への導入実績やハイレベルな機能の観点で6から10ぐらいの製品に絞り込み(ロングリスティング)、次に自社固有の機能や開発方針の観点で2から3ぐらいの製品に絞り込みます(ショートリスティング)。そしてRFPを使って、具体的な機能レベルの評価を盛り込んで1つの製品に決定します(ファイナルセレクション)。

もちろん選定の段階数や製品数には決まったものはありません。また、同一製品で複数ベンダーにRFP依頼するなどバリエーションもあります。しかし、段階的に絞り込む考え方は一緒です。
今回この記事を取り上げたのは、ユナイテッドアローズの選定経緯を表した画像資料が掲載されていたので、一般的にも参考になると思ったからです。

事例の確認

詳細は記事を読んでいただくとして概要を確認しておきます。

選定段階 クライテリア クライテリア詳細
1次選定 公知情報を用いた評価選定 小売業向け本部商品管理導入実績・導入ユーザーの規模、業務ファンクション・機能カバレッジ
2次選定 ユナイテッドアローズ固有要件に対する機能・体制・コスト評価選定 オープンアーキテクチャ、国内導入実績、高効率高品質な開発・保守基盤
2.5次選定 プラットフォーム優位性、コストを中心に評価 MS Dynamicsのパフォーマンス性検証、O社ライセンス費用低減確認
最終選定 現行改修VS新規構築、フィージビリティ・コストを中心に最終評価選定 ソリューションフィージビリティ、マネージドサービスを前提としたコスト

(出所)ITmedia記事内の画像にもとづいて作成

事例では1-2次選定で19社から7社へ、2.5次選定で7社を2社へ、最終選定で2社を1社へ段階的に絞り込んでいます。最終選定では、次のような点が評価ポイントだったとしています。

  • アーキテクチャ:オープン性があり、新技術や構造の拡張性に優れている
  • パートナリング:戦略パートナーとして、開発や運用品質を長期に渡ってコミットしてくれる
  • SIコスト:コストが破格的にリーズナブルなこと

おまけ

今回選定された製品は、Microsoft Dyanamidx AXでした。ところで、記事内には商品調達のユーザーインタフェース画面が紹介されていたのですが、商品の写真が一覧表示されていて、見るからにDyanamidx AXではありません。最後まで読むとサードパーティ製品を使ったとのことがわかります。

画面のレイアウトが粗々わかるワイヤーフレームを作成し、画面のプロトタイプを作成、それを修正してデザインカンプを作成していくという流れは、Webサイト構築のイメージです。
ERPを使った基幹業務システムの導入で、このようなアプローチを組み合わせてUI設計するんだというのは、個人的な気付きでした。