2月18日に株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が電子債権記録機関としてのサービスを開始しました。でんさいの仕組みについては、でんさいネットのホームページに詳しく解説されていて、色々とメリットがあるようですが、これが従来の手形・振込に代わる新たな決済インフラとして普及していくのかどうかは、どの程度中小企業の資金調達の円滑化が図られるのかにかかっています。
以下に、中小企業への普及にあたってでんさいがもつ強みを整理しました。
- 中小企業金融の担い手である信用金庫・信用組合・農漁協系統金融機関・商工中金などを含む全国の金融機関が参加している。すなわち、これまで取引している金融機関に申し込めばよい。
- 当座預金口座または普通預金口座が利用できる(一部金融機関で限定あり)ので、新たに口座を開設する必要はない。
- 手形にはある紛失・盗難のおそれがない。
- でんさいを支払手段として取引先に譲渡できる。
- でんさいを金融機関に譲渡して手形割引のように資金化できる。
- 譲渡および割引は何度でも分割実行できる。
- 手形関連のコスト(発行事務、郵送料、印紙税負担)を削減できる。
- 支払期日になると自動的に送金されるため、振込手続、取立手続は不要である。
- 支払期日当日から資金を利用することができる(支払期日=口座入金日)。
- 既存のツール(インターネットバンキング/ファームバンキング)を利用して金融機関経由でアクセスする。FAXなど書面による方法も想定されている。
(「でんさいネットの仕組みと実務」より 筆者にて抜粋・要約)
こうしてみると、でんさいは売掛金を活用したファイナンス(期日前に譲渡・割引が柔軟に可能であること)がポイントであることがわかります(2010年度において企業が保有する売掛金残高は約182兆円)。
ただ、一方ででんさいの利用は取引先を含めてでんさいネットと契約する必要があること、一部しか切替が進まない場合には複数の支払手段を取り扱うので事務は煩雑になる可能性があることが、普及の障害になりそうです。