決算発表状況-東証2013年3月期(平成25年3月期)

東京証券取引所から2013年3月期の決算短信の発表状況が公表されましたので、その概要を今回はご紹介します。

平均発表所用日数は前年同期と同じ38.4日

企業の決算日から決算短信の発表日までに要した日数を「所要日数」といいます。この所要日数は決算発表状況の動向を示す一つの指標として、最も会社数が多い3月決算会社の状況が毎年東証から公表されています。

2013年3月期の3月決算会社の平均発表所要日数は前年同期と同じ38.4日でした。ここ約20年で全体の所要日数が縮まらなかったのは初めてではないでしょうか。

下表は過去の東証発表資料に基づいて作成した平均所要日数の推移です。

決算期 平均所要日数 備考
1993.3 71.0日 連結作成会社
53.9日 連単同時発表会社
2001.3 50.3日 連結作成会社
2007.3 40.9日 全体
2012.3 38.4日 全体
2013.3 38.4日 全体

これを見ると、2000年に入ってからの数年間で大幅に短縮したあと、短縮の度合いは減っていることがわかります。

3月決算会社では2極化の傾向

決算日後30日以内に決算発表をする会社を「早期発表会社」といいます(最近は会社数も増えたからか言わなくなりましたが)。3月決算会社は途中に連休を挟むこともあり、そのため決算発表の日別分布状況をみると連休前と後で大きく2つの山があることがわかります。

下図は2013年3月期における決算発表の日別会社数の分布状況です(「平成25年3月期決算短信発表状況等の集計結果について」より作成)。

2013年3月期決算発表状況(日別会社数推移)

この2つの山ができる背景には、東証などが年次決算の決算短信の発表の早期化について「決算発表の開示時期を45日以内が適当、30日以内がより望ましいとする」指針を出していることが影響しています。

以下、それぞれの山ごとに見ていきます。

早期発表会社

一つ目の山にあたる2013年3月期の早期発表会社数は前年より1社少ない332社(全体の19.5%)でした。

早期発表会社の決算発表のピークは通常4月最終週になりますが、今年はカレンダーから30日が4月最終週唯一の平日で、かつ連休期間の途中にあたるため、その前の週の26日に最多の120社が発表しています。

「30日以内がより望ましい」に対して、それをクリアし市場からの要請には応えているので、どこまで早期に発表するかは会社次第となります。

下表は過去の東証発表資料に基づいて作成した2008年3月期以降の早期発表会社数の推移です。

決算期 早期発表会社数 全体に対する割合
2008.3 355社 19.66%
2009.3 362社 20.33%
2010.3 368社 21.16%
2011.3 336社 19.53%
2012.3 333社 19.54%
2013.3 332社 19.46%

これを見ると早期発表会社の数は全体の約20%で横ばいになっていることがわかります。

所要日数30日超の会社

二つ目の山のピークは、5月10日で380社がこの日に発表をしています。「45日以内(=3月決算会社は5月15日まで)が適当」に対して1,671社(全体の97.95%)がそれをクリアしています。

東証では発表日が特定の日に集中している状況を受けて次のような弊害を説明し、集中緩和への協力を要請しています。

特定日への決算発表の集中は、決算情報の消化に弊害が生じ、市場の効率が低下することが懸念され、投資者による情報収集にも影響を及ぼすことも予想されます。また、兜倶楽部では著しい混雑のため、記者会見等を開催する時間が遅れることや、1社あたりの会見時間が制約を受けるなどの弊害が生じています。
(東証:平成25年3月期決算短信発表状況等の集計結果について P2より)

決算早期化の動向

決算発表を早めるための決算早期化の活動は、その背景となる制度改革や市場からの要請、内部管理の目的は変化していますが、継続的に取り組まれているテーマでもあります。

最後に今後の決算早期化の動向を考えてみます。

残り80%の会社が30日以内に決算発表するようになるか

決算早期化は昔から競合他社が早期に発表するとそれにつられるように同業内で早期化が進む傾向にあります。業種の中のリーディングカンパニーが内部管理目的や東証など市場からの要請を意識して30日内の決算発表に取り組むことがあった場合、数年内に業種単位で大きく進む可能性があります。

スピードだけではなく品質を向上する

決算を早期に開示したからといって、開示される財務情報の有用性が損なわれては意味がありません。決算発表日自体は早期化をしなくても、その中の財務情報の有用性を高める活動は重要視されてくると思われます。

例えば、グループにおいて決算日を統一する活動があげられます。早期に発表しても決算日の異なる子会社の財務諸表は3ヶ月前の数値を取り込んで連結財務諸表を作成している場合と比べて、決算日の統一に(そのための対象子会社の単体決算早期化にも)取り組んで、連結決算日ですべての会社が個別決算を作成して連結財務諸表を作成している方が望ましいと言えます。