2013年9月に開示すべき重要な不備などを公表した企業3社

2013年9月に内部統制報告書において、開示すべき重要な不備などを公表した企業です。経営者の評価結果で、開示すべき重要な不備などがあり内部統制は有効ではないとした企業3社の事例をご紹介します。

開示すべき重要な不備の概要

アイフリークホールディングス

アイフリークは、5月23日に有限責任あずさ監査法人より平成25年3月期の無限定適正意見を付した監査報告書を受領しましたが、6月に監査法人からアイフリークの100%子会社において、アイフリーク取締役が関与したと思われる不明瞭な資金の流れが判明したとして、調査の必要がある旨通知し、質問書を提出しました。しかし、アイフリーク側からは文書による調査報告書は提出されず、監査法人は調査未了の間は監査証明を付与しない旨通知しました。

アイフリークでは6月末に連結子会社における不明瞭な取引を公表するとともに、有価証券報告書の提出期限の延長承認申請をして調査をしました。その後7月末に調査委員会の調査結果と今後の対応を公表したものの、他に不明瞭な取引がないことについて監査法人の心証が得られず、再度有価証券報告書の提出期限の延長承認申請をして調査を進めていました。

8月末に追加調査結果と今後の対応を公表し、9月2日に有価証券報告書を提出をしています。同時に提出された平成25年3月期の通期の内部統制報告書において、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効でないとの評価結果を表明しています。7月末の調査結果で判明していた事案以外の重要な不正・不適切な取引は、追加調査によって発見されませんでした。

内部統制上の不備としては、関与取締役に権限や情報が集中していたことやコンプライアンス意識の問題、連結子会社のメインバンクにプライベート口座を使用していたため取引先経由で関与取締役の個人口座への資金移動などを把握できなかったこと、直送取引の計上時における実在性確認手続の不十分さなどをあげています。

なお、アイフリークでは、9月18日付で有限責任あずさ監査法人と監査契約を合意解除し、一時会計監査人に監査法人アヴァンティアを選任しています。また、10月には中核事業であるモバイルコンテンツ事業を中心に、今一度国内に経営資源を集中させることが必要であるとの判断から、上記子会社の全株式を譲渡し、決済サービス事業から撤退しました。

イチケン

工事費用の予算が不足して損益の悪化が見込まれる工事等について、協力会社(下請会社)に工事代金の一部を請求しないよう依頼し、別の工事代金として請求させて支払うことを繰り返していました。

平成22年3月期からH25年3月期まで4期の訂正内部統制報告書を提出し、開示すべき重要な不備(重要な欠陥)があり内部統制は有効ではないとの評価結果を表明しています。

具体的には、工事原価の先送りは①契約金額を減額処理する方法、②当初から工事代金の一部を除いて契約する方法、③工事代金全額の支払いを留保する方法によって、また、簿外債務となった工事代金の返済は、①協力会社が関わる別の工事の代金として支払う方法、②別の協力会社を介して支払う方法によって行われていました。

内部統制の不備としては、受注プロセスにおいてコスト削減の役割や責任分担が不明確で工事原価先送りの遠因となったこと、購買プロセスにおいて例外処理(単独見積)案件への対処方法が社内規定に明文化されておらずチェックが甘くなっていたことや購買回議書の審査および予算照合手続が不十分だったこと、支払プロセスにおける管理部門の内容審査が形式的だったことをあげています。また、全社的な統制環境に関する問題点(コンプライアンス意識の欠如、人事の長期固定化、内部通報制度の形骸化)、モニタリング機能の不十分性もあげています。

イチケンでは、平成22年3月締結の工事請負契約(1件)に関し、工事受注に関わる業務プロセスにおいて、受注に対する社内の審議不十分や契約内容の審査不足、営業管理規程の整備不十分といった整備及び運用の不備の状況が判明し平成22年3月期の内部統制報告書でも重要な欠陥があり内部統制は有効ではないとの評価結果を表明しています。

オウケイウェイヴ

H24年10月に子会社化した株式会社ブリックスにおける一部不適切な会計処理に関連して、平成25年6月期の通期の内部統制報告書において、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効でないとの評価結果を表明しています。

具体的には、同社の取引先の1社に対し、多額の未回収残高があり、関連する取引調査の結果、オウケイウェイヴが子会社化を検討する際に提出を受けた財務諸表等において増資や借入を円滑に進めることを目的として、当該取引先との間で一部不適切な会計処理を行っていたことが判明しました。

オウケイウェイヴでは8月に、株式会社ブリックスに対するガバナンス体制を強化するため、代表取締役社長と取締役経営管理本部長をオウケイウェイヴが選定(専任者として就任)し、また監査役にオウケイウェイヴの監査役が兼務することで、連結グループとしての決算財務報告プロセス、業務プロセスなどの監査体制を強化しています。

開示すべき重要な不備の一覧

会社名
決算期
開示すべき重要な不備の内容
事業年度末までに是正できなかった理由
開示すべき重要な不備の是正方針
連結財務諸表に与える潜在的な影響
付記事項、特記事項
株式会社アイフリークホールディングス
H25.3
平成25年6月17日、同年4月及び5月に、当社の海外子会社であるI-FREEK ASIA PACIFIC PTE.LTD.において当社取締役が関与した不明瞭な資金の流れが判明いたしました。
それに伴い、当社取締役会及び監査役会において、事実関係の詳細及び経緯の調査を行ってまいりましたが、より厳格に調査を行い、調査の客観性・信頼性を高めることを目的として「調査委員会」を設置し、鋭意調査を進めてまいりました。
本調査の結果、海外子会社における同取締役が関与した不明瞭な資金の流れについては、同子会社の資金が取引のある会社を経由し、さらに同取締役の個人口座を経由して当社の滞留売掛金への入金、また、未承認の経費等の支払いや個人的な貸付に充当されていた事実が判明いたしました。当該事項について、かかる行為を防止することができず、また発覚が遅れたのは、同取締役に権限や情報が集中していたことやコンプライアンス意識に問題があったこと、業務執行を相互に監督すべき機能が十分でなかったためであります。
さらに、同取締役が関与した国内の直送卸取引においても、他社への資金融資を目的とした納期等の点において通常とは異なる直送卸取引がなされており、結果的に当連結会計年度において実在性のある直送卸取引がなされていないことが判明いたしました。当該取引を防止することができず、また発覚が遅れたのは、同取締役の決裁権限の範囲内であり、売買基本契約書及び受発注に係る証憑は整っており、現物の発送についての事実を証明する証憑の確認を実施していなかったこと、業務執行を相互に監督すべき機能が十分でなかったためであります。
以上のことから、当社の全社的な内部統制及び直送卸取引に係る業務プロセスにおいて、開示すべき重要な不備 が存在していると判断しております。
当該事項は当連結会計年度末日後に発覚したため、当該不備を当連結会計年度末日までに是正することが できませんでした。
(1)コンプライアンス意識の向上
(2)経営体制の強化
(3)海外子会社における商流の透明性の確保
(4)業務プロセスにおける当社の経理部門におけるチェック機能の追加
(5)内部通報制度の充実
【付記事項】
当該行為を行っていた取締役は、平成25年7月31日付にて取締役を退任しております。
株式会社イチケン
H22.3
H23.3
H24.3
H25.3
平成25年7月中旬、当社関西支店において同支店長への施工部門長からの報告によって、一部の工事について工事原価の付け替え(工事代金を取引先の了解のもと、本来とは異なる工事の代金として支払うこと)による不適切な会計処理が行われた可能性があることが判明いたしました。当社は、事実関係の詳細及び経緯などを解明するため社内調査を進めてまいりましたが、より厳格に調査を行い、調査の客観性及び信頼性を高めることを目的として、平成25年8月6日に当社と利害関係のない弁護士及び公認会計士による「外部調査委員会」を設置し、事実関係の調査、分析等を行ってまいりました。
その結果、平成25年9月9日に同委員会から報告書を受領し、関西支店において数年前から工事原価の付け替えによる不適切な会計処理が行われていた事実が判明いたしました。

かかる不適切な会計処理が行われた主な原因は以下のとおりと認識しております。
①取締役の相互牽制を含めた組織内のガバナンス体制の脆弱性
②不正に対する認識の低さ及び倫理教育の不徹底による個々の組織構成員の不正防止・抑止力の脆弱性
③内部通報制度の形骸化と、制度に対する低い信頼性
④不正防止上のキーとなる人材・職位者に関する人事ローテーションの不十分性
⑤管理部門による「異常事象」の認知把握能力不足

以上の財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備(重要な欠陥)に該当すると判断いたしました。
なお、上記の不備については、本訂正報告書提出時点において是正が完了しておりません。
本件に対する当社の対応として、第84期以降の決算を訂正し、平成25年9月12日に第84期(自 平成21年4月1日 至 平成22年3月31日)から第87期(自 平成24年4月1日 至 平成25年3月31日)までの有価証券報告書及び第84期第2四半期から第87期第3四半期までの四半期報告書の訂正報告書を提出いたしました。

①企業風土改革と組織の活性化
全役職員に対するコンプライアンス教育の実施
ジョブローテーション等の実施
②牽制機能の強化とリスク情報の早期把握
支店管理部門の本社部門への移管
内部通報制度の活性化
協力会社専用の相談窓口の設置
③業務(内部)監査体制の強化
作業所監査の強化
業務(内部)監査体制の強化・充実
株式会社オウケイウェイヴ
H25.6
平成25年6月期第3四半期の連結決算作業を行ったところ、当社が平成24年10月に子会社化した株式会社ブリックスの売上高及び売掛金と売上原価及び買掛金を確定する証憑類に不足が生じていたため、その確認を詳細に行いました。その過程で、株式会社ブリックスの取引先の1社に対し、多額の未回収残高があることがわかりました。このことから、速やかに社外の専門家の協力も得て社内調査を行ったところ、当該会社は株式会社ブリックスが実質的に経営を支配している会社であることが明らかになりました。
上記に伴い、さらに関連する取引調査を行ったところ、株式会社ブリックスは、当社が同社の子会社化を検討する際に提出を受けた財務諸表等において未払費用等を過少計上しており、これらは株式会社ブリックスが増資や借入を円滑に進めることを目的として、当該会社との間で不適切な会計処理を行っていたものであることが判明いたしました。
この不適切な会計処理を修正したことに伴い、株式会社ブリックスは平成24年9月30日現在で債務超過の状態にあり、企業価値が毀損していたことから、平成25年6月期第2四半期報告書について、株式会社ブリックスへの当社投資額とこれに対応する株式会社ブリックスの資本との相殺消去にあたって発生した差額を関係会社投資損失とする訂正報告書を提出いたしました。
これは、同社においてコンプライアンスの徹底が不十分であり全社的な内部統制が未整備であったこと及び同社の業務プロセスに係る内部統制が未整備であったことに加え、当社において連結子会社のモニタリングに関する全社的な内部統制に不備があったことにより発生したものと認識しております。
上記不適切な会計処理は当連結会計年度末日の直前に判明し、時間的制約からその発生原因を踏まえた内部統制の整備及び運用を完了することができなかったため、当該開示すべき重要な不備を当連結会計年度末日までに是正することができませんでした。
(1)経営陣および財務報告に係る担当者へのコンプライアンス教育実施
(2)グループ経営及び経理体制の強化
(3)当社による毎月の総勘定元帳、債権債務内容チェック
(4)当社監査役によるチェック強化
(5)当社による直接の内部監査
(6)内部通報制度の設置
(7)今後の買収時のチェック項目強化

Source:開示情報「内部統制報告書」「訂正内部統制報告書」などをもとに作成

注:情報の検索範囲の網羅性については検証していません。あらかじめご了承ください。