2014年2月に内部統制報告書における開示すべき重要な不備の事例です。経営者の評価結果で、開示すべき重要な不備などがあり内部統制は有効ではないとした企業の事例をご紹介します。
開示すべき重要な不備などの概要
NECネッツエスアイ
経理部に所属していた従業員1名が会社資金を着服し、ギャンブル等に流用していた不正行為が判明しました。具体的には、①経理部管理の金庫から小口現金を抜き取り一時着服、②小切手を裏書・換金のうえ一時着服、③小切手を二重に発行し、換金のうえ着服、④普通預金を不正に引き出し、⑤小切手を換金のうえ着服し、別途ファームバンキングにより送金、というものでした。これらの行為について、銀行残高証明書、現金出納帳や印章請求簿などの偽造・改竄、不正仕訳を行うなどの方法で発覚を免れていたとのことです。会社は、H21年3月期から平成25年3月期の訂正内部統制報告書を提出しました。過去において内部統制は有効であるとした評価結果について、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効ではないと評価結果を訂正しています。
リソー教育
平成25年11月に証券取引等監視委員会の任意調査を受けたのち、第三者委員会を設置して過去の会計処理について調査をした結果、不適切な会計処理が判明しました。現場の管理者が中心となって、それぞれの担当部署の売上目標を達成するため、部下社員に指示をして売上の過大計上や前倒し計上等を実施していました。リソー教育、名門会及び伸芽会の3社による不適正な売上計上額は、H26年2月第2四半期までの累計で合計8,308百万円でした。会社は、H22年2月期から平成25年2月期の訂正内部統制報告書を提出しました。過去において内部統制は有効であるとした評価結果について、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効ではないと評価結果を訂正しています。
現任の監査法人は平成20年2月期から担当していますが、この不適切な会計処理は前任の監査法人時代からも指摘・指導をされてきたそうです。しかし、売上ノルマ達成のためには不適切な会計処理もやむを得ないという社内風土は変わらず、根本的には改善をできませんでした。
ネクス
適切な経理・決算業務のために必要かつ十分な専門知識を有した社内の人材が不足していたため、決算作業に遅延が生じ、決算処理及び連結財務諸表等の表示に関して監査人から重要な指摘を受けたとのことです。会社は、H25年11月期の通期の内部統制報告書において、開示すべき重要な不備があり内部統制は有効ではないと評価結果を表明しています。
開示すべき重要な不備の一覧
- 会社名
- 決算期
- 開示すべき重要な不備の内容
- 開示すべき重要な不備の是正方針
- 付記事項
- 特記事項
- NECネッツエスアイ株式会社
- H21年3月、H22年3月、H23年3月、H24年3月、H25年3月
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平成25年12月、当社の連結子会社であるネッツエスアイ東洋株式会社(以下「ネッツエスアイ東洋」という)の社内調査において、従業員による不正行為が発覚いたしました。
当社はただちに顧問弁護士とともに調査を実施し被害金額を確定するとともに、不正を許した背景の明確化など事件の徹底的解明を行うため、社外監査役をトップとする調査委員会を設置し調査を実施しました。
当該調査により、ネッツエスアイ東洋の一従業員が、小切手の二重振出しおよび不正な裏書による現金化などにより着服を行うとともに、銀行残高証明書などの偽造や不正仕訳を行うなどの方法で発覚を免れていたことが確認されました。
これに伴い当社は、過年度の決算を訂正するとともに、平成21年3月期から平成26年3月期第2四半期までの有価証券報告書、四半期報告書の訂正報告書を提出いたしました。
これらの事実は、当該不正の発生したネッツエスアイ東洋の経理部門の一部業務において、会計伝票および支払処理の自己承認、書類の偽造・隠ぺい、重要な勘定科目のモニタリングが不十分であったこと等の複合的な要因から、牽制が有効に機能しなかったことによるものであります。
以上のことから当社は、全社的な内部統制および決算財務報告プロセスの一部に開示すべき重要な不備(重要な欠陥)があり、当該不正行為が行われ、かつその発見に遅れが生じたものと認識しております。
なお、上記事実は当事業年度末日後に発覚したため、当該不備を当事業年度末日までに是正することができませんでした。 -
(1)業務の管理体制と運用の改善
①経理部門における職務分離の徹底
②経理責任者による責任ある業務遂行の徹底
③重要な勘定科目の残高照合の徹底
④定期的な人事ローテーションの実施
(2)ガバナンス・社内制度の改善
①コンプライアンス教育の徹底
②内部監査機能の強化
③内部通報制度の周知と積極的活用 - -
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- 株式会社リソー教育
- H22年2月、H23年2月、H24年2月、H25年2月
- 社は、平成25年11月下旬、証券取引等監視委員会の任意調査を受けたことから、当社及び当社の連結子会社である株式会社名門会において不適切な会計処理が行われた疑いが明らかとなりました。
そのため、過去の会計処理について徹底した調査を行い、不適切な会計処理の有無を明らかにし、会計処理の客観性及び信頼性を確保することなどを目的として、平成25年12月16日、利害関係のない弁護士及び公認会計士による第三者委員会を設置し、調査を進めてまいりました。
平成26年2月10日付で同調査委員会より調査報告書の提出を受け、当社及び当社の連結子会社である株式会社名門会、株式会社伸芽会において売上の不適正計上が行われていた事実が判明いたしました。
かかる売上の不適正計上が行われた主な原因は以下のとおりと認識しております。
①売上を過度に重視する経営方針
②営業成績と連動した人事評価制度
③管理部門によるチェック・監査機能の喪失
以上の財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
なお、上記の不備については、本訂正報告書提出時点において是正が完了しておりません。
本件に関する当社の対応として、平成20年2月期(第23期)以降の決算を訂正し、平成20年2月期(第23期)から平成26年2月期(第29期)第2四半期までの有価証券報告書、半期報告書及び四半期報告書について訂正報告書を提出いたしました。 -
(1)コンプライアンス重視の経営方針の再確認
(2)組織改革によるコンプライアンス遵守体制の整備
①再発防止委員会の新設
②取締役会・監査役会・内部監査室の機能強化
③管理部門の強化
④子会社に対する経営管理機能強化
(3)社内制度の改革
①人事制度の改革
②内部通報制度
③全役員・全社員に対する不正防止のための継続的な研修の実施
(4)業務についての改革
①授業・講座に関する内容・手続の改革
②退会時の手続の明確化
③株式会社名門会における授業に関する改革
(5)適切な会計システムの構築 - -
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- 株式会社ネクス
- H25年11月
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・信頼性のある財務報告の作成に必要な体制に関する認識が不十分であった結果、適切な経理・決算業務のために必要かつ十分な専門知識を有した社内の人材が不足していること。
・決算作業に遅延が生じ、決算処理及び連結財務諸表等の表示に関して社内のチェックが不十分であった為、監査人から重要な指摘を受けたこと。
当連結会計年度の末日までに是正されなかった理由は、会社が急速に事業拡大してく中で当然に管理体制を充実すべく整備を行っておりましたが、結果的に決算処理を適切に遂行するための能力及び経験を有した社内の人材の補充を行うことができなかったためであります。 - 全社的な内部統制の強化・徹底を行うとともに、本書提出日現在、連結子会社の経理、決算業務対応者として既に2名確保済みで、決算業務のために必要かつ十分な知識を有した人材1名も内定済みであり、今後2ヶ月以内を目途として経理要員(派遣含む)2名程度を採用する予定としており、翌連結会計年度においては、適切な内部統制を整備し運用する方針であります。
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1)当社は平成25年12月11日の取締役会において、株式会社SJIが営む中部事業部、関西事業部及び九州事業部におけるシステム開発事業に関して有する権利義務を当社のシステム開発事業子会社である株式会社ネクス・ソリューションズが承継する会社分割(吸収分割)を行うことを決議いたしました。
この承継によって翌期以降の当社の財務報告に係る内部統制の有効性に重要な影響を及ぼす可能性があります。
2)当社は平成25年12月11日の取締役会において、CareOnline株式会社の全株式を取得し、連結子会社化することを決議いたしました。
この株式取得によって翌期以降の当社の財務報告に係る内部統制の有効性に重要な影響を及ぼす可能性があります。 - -
Source:開示情報「内部統制報告書」「訂正内部統制報告書」などをもとに筆者にて作成