日本内部統制研究学会第5回年次大会

日本内部統制研究学会の第5回年次大会に出席しました。「内部統制:あるべき姿と現実」というテーマのもと、有識者の方々による報告・講演・討論会が行われました。アカデミックな内容から実務的なものまで有益な話が聞けました。

実務家の方のお話で、私が特に興味深く聞いたのは、「中堅中小上場企業における有効性と効率性を両立した内部統制」と題して報告された株式会社ニイタカ監査室の方のお話です。サブタイトルは”エクセルを用いた効率的な内部統制関連資料の整備”でした。

(メモ)

内部統制の位置づけ

  • 組織改正など内部統制は、毎年変わるもの・見直すものである。
  • 内部統制の整備・構築を通じて従業員を教育する・人材を育てる。

何故、効率化するのか

  • もともと監査室の人数は少なく、効率化しても人は減らない。
  • そのため効率化により残った時間(監査業務のルーチン化により生まれた時間)で何をするかが大事である。

監査室の監査業務を通じて単なる○×のチェックだけはなく、現場業務に対する改善提案などの付加価値を提供するようにしているみたいです。その結果、ニイタカでは現場から”監査に来てもらった方が効率があがる”という声が出ているそうです。

これまでの取り組み

  • (1年目)J-SOXの法制度対応
  • (2-3年目)ISOと内部監査の融合
  • (それ以降)経営層と一体化した指導監査・経営監査の実施

J-SOX導入当初はやはり制度対応が中心だったそうですが、段階を経て3つ目の会社業務・内部統制・子会社業務全体に対して優先順位をつけて”指導”を中心とした監査になったそうです。

認識された成果

  • 例外的な事象については事前に監査室へ相談・確認がくるようになった
  • ルーチン業務が安定してきた(できて当然という意識)
  • 経営者がキーコントロールの重要性を認識するようになった(改善・統制目標をキーコントロールに設定することで監査室を通じて指導させるなど)
  • 被監査部門が本音で話をしてくれるようになった

4つ目について、監査室が単に○×をつけて、できている/できていないという結果を指摘するだけの仕事をしている場合は、通常被監査部門は委縮して何も話さなくなる。逆に監査室の仕事の仕方・フィードバック内容から、自分たちのために監査をしてくれているということをわかってもらえると、コミュニケーションがよくなり本音で話もしてくれる、と仰っていました。

中堅中小の上場企業で参考になる(羨ましくなるぐらいの)お話かと思います。