決算早期化-スピードと正確性を両立するためのアプローチ(前編)

balance

決算早期化を目標にかかげたプロジェクトでは、日程短縮、すなわち、業務のスピードアップを優先して課題解決に取り組みます。そのためケースによっては、締切日の順守を徹底し、例えば、請求書の到着が間に合わない業者は次月計上にまわしたり、概算計上の仕組みを採用して目標を達成することもあります。

いわば、スピードと正確性というトレードオフの関係にある両者のバランスをみながらも、(時間的経済的な制約も考慮し)目標達成を考えてスピードを優先するアプローチです。

ところで、決算早期化以外の課題をメインテーマに据えて取り組むプロジェクトでも、プロジェクト目標の一つとして早期化を組み込むことがあります。最近は、情報システムの再構築と合わせて決算早期化に取り組む相談を受ける機会も多いのですが、早期化がメインのプロジェクトでないため矛盾する目標を同時に取り組まなければならないことがあります。

トレードオフの関係にある目標を設定した背景

今回取り組んだ内容というのは、基幹系業務のシステム再構築プロジェクトの中で、ある勘定科目の計上に至る業務プロセスについて、「経理部門への月次締めデータを従来より1日早める」と同時に「確定データの精度を向上させる」ということでした。

業務プロセスを抽象的なモデルとして表すと次のようになります。

  1. 事業部門の現場担当者が計上の基礎となるデータを顧客から受領しシステムに登録する
  2. 本社部門の担当者が基礎データをもとにシステムで会計数値の計算~調整~仮確定計算をする
  3. 事業部門の管理担当者がレポートをチェックして基礎データを修正する
  4. 本社部門の担当者が修正後の基礎データも含めて会計数値の計算~調整~確定計算をする

この業務プロセスにおいて、最後の確定データ(経理提出データ)の精度が高いとはいえず翌月修正をすることがあったため、「確定データの精度を向上させる」という目標が立てられました。その一方で、月次決算を早期化したいなどの要望があり、「経理部門への月次締めデータを従来より1日早める」という目標も同時に立てられたのです。

上記二つの目標である「経理部門への月次締めデータを従来より1日早める」と「確定データの精度を向上させる」を同時に達成することが難しいのは、両者が時間の観点からみた場合に、「業務のスピードアップ」と「精度の向上」というトレードオフの関係にあるからです。

業務のスピードアップと精度の向上を両立させるときのアプローチ

もう少しトレードオフの関係にあるということを補足しておくと、「時間の観点でみた場合に」両者は具体的にそれぞれ次のような性質を持ちます。

まず、業務のスピードアップは課題に対する改善の方向性として次の二つに取り組みます。

  • アクティビティの作業時間を短縮する
  • アクティビティの作業着手を早める

一方、精度の向上は課題に対する改善の方向性として次の二つの状況を作るようにします。

  • アクティビティの作業時間を十分確保する
  • アクティビティの作業完了期限を延ばす

対比すると全く反対の方向性であることがよくわかります。もちろん、同一のアクティビティに対してスピードアップと精度向上を同時に実施するのは時間の観点で矛盾します。ただ、業務プロセスは複数のアクティビティが機能的に連鎖しているものですので、上流から下流の業務プロセスを見渡すことで解決の糸口が見つかることもあります。

その解決策の一つに、アクティビティ間で日程を再配分して全体日程を短縮するという考え方があります。

具体的には、業務プロセスを構成する各アクティビティを分析し、クリティカル・パス上で早期化上の阻害要因になっているアクティビティはスピードアップする一方で、そこで生み出したバッファー(余裕日程)を精度向上のキーとなるアクティビティに振分けるというアプローチです。アクティビティという点ではなく、アクティビティが連鎖した線として見ることが必要です。

業務プロセスのリードタイムを改善するときはPERT図が有効である

決算早期化のように、業務プロセスのリードタイムに着目して業務のスピードアップを図ったり、目標日程を配分したりするときに便利なツールが『PERT図』です。今回はシステム再構築のプロジェクトでしたので通常使用する業務フローで問題ないのですが、タスクの中でこの課題を打合せするときだけはPERT図を採用して業務の分析と検討を行いました。

PERT図とは、アクティビティの前後関係に着目して一連の業務プロセスをアローダイヤグラムとして表現したフローチャートのことです。

PERT図

このPERT図の特徴は開始点と終了点を結んだ矢線が「アクティビティを表し」かつ「時間を持つ」ということです。通常、よく目にするフローチャートの技法とは矢線の使い方が違います。クリティカルなパス(経路)上のアクティビティの所要時間を合計すると全体の所要時間になります。

PERT図2

このことから、業務のスピードアップを図るためには阻害要因(ボトルネック)となるアクティビティの矢線が持つ時間を短縮するか、アクティビティの開始点を早める必要があることがわかります。

作業時間を短縮する

作業時間短縮

作業の着手を早める

作業の前出し

一方で、精度を向上させるためにキーとなるアクティビティについては、アクティビティの矢線が持つ時間をより確保するか、アクティビティの終了点を延ばす状況を作りだすということがわかります。これらをアクティビティ間で組み合わせて全体日程の短縮を目指します。

このような分析は、一般的な業務プロセスでもリードタイムを埋め込めば検討できますが、PERT図は時間概念を持つアクティビティそのものが直接的に表記されますので、視覚的にとらえやすいツールです。

次回は、単純な業務モデルについて、PERT図を用いたアクティビティ間の日程再配分の進め方を見たいと思います。

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Akiyoshi KANEKO

業務プロセスを可視化(モデル化)し、その可視化されたドキュメントを中心においてプロジェクトを推進するアプローチを提唱している。経理・財務分野を主な専門領域として、業務プロセスの改善やシステム構築、組織体制の整備に関するコンサルティングに従事。プロジェクト現場では、「お互いの仕事を理解する」「現状の課題を共有する」「考えていることを相手に伝える」「新しいしくみを共有し実行まで落とし込む」よう関係者間の橋渡し役として活動する。著書『内部統制評価にみる「重要な欠陥」の判断実務』『阻害要因探しから始める決算早期化のテクニック』
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