でんさいネットが商慣習を変えるか(帝国データバンクによる手形利用企業の実態調査)

今年の2月に株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が電子債権記録機関としてのサービスを開始し、従来の手形・振込に代わる新たな決済インフラとしてどの程度普及するのか、そして中小企業の資金調達の円滑化が図られるのかについて気になっています。

普及の壁となっている一つが、日本独特の商慣習として残っている手形取引です。インターネット取引など以前に比べて商取引がスピードアップされている現代においては、手形による決済は少し時代遅れのような感じを持ちますが、いまだに4割強の企業で手形決済が残っているそうです。

先月公表された帝国データバンクによる手形利用企業の実態調査の結果が興味深いものでした。

  • 手形利用企業は調査対象企業の44.5%にのぼる
  • 一方で取引金額に占める手形の割合は支払で25.1%、回収で25.9%である
  • 地域別にみると手形利用率が最も高い地域は北陸に本社を置く企業で59.1%、最も低いのが関東に本社を置く企業で36.9%である
  • 売上規模では「100~500億未満」の企業が利用率57.4%、手形割合30.2%と高く、「1億円未満」の企業では利用率25.7%、手形割合19.7%と低くなっている
  • 「500~1000億円未満」「1000億円以上」の規模の大きな企業では利用率はそれぞれ55.5%、44.6%と高いものの、手形割合は10%台である
  • 業種別にみると「製造業」の利用率が75.2%、手形割合が28.7%と高い

(「手形利用企業の実態調査」より 筆者にて抜粋・要約)

上記からは数十億から数百億規模の売上を持つ企業、特に企業間取引の多い製造業における普及がポイントのようです。